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つがいの名前
第六章

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第六章

 そうして家に帰る。家に帰るともう猫が二匹増えていた。可愛らしい虎猫が二匹いた。首輪までされている子猫達である。
「もう来たのじゃな」
「そうよ」
 素っ気無く彼に返す娘だった。
「思ったより早く来てね」
「そうだったのか」
 しかもであった。彼は二匹なのを見てまた言った。
「つがいになったんじゃな」
「そうよ。別にいいわよね」
「うむ。いや」
「いや?」
「かえっていいことじゃ」
 こう返すのだった。
「別にな」
「そうなの」
「それでじゃ。どうじゃ?」
 あらためて問い返しそのうえでの言葉だ。
「名前は」
「そうね。名前ね」
「つがいじゃし」
 そうしてここで彼が思い浮かんだ名前は。
「譲二と奈々でどうじゃ」
「譲二と奈々?」
「そうじゃ。それでどうじゃ」
 その名前を出すのだった。
「それでじゃ」
「何でその名前なの?カップルの名前よね」
 昨日の話だった。人のカップルの名前を猫達に付けるとカップルは何時までも幸せに過ごせて猫達もそれぞれ長生きできると。そうなるというのだ。
「それって」
「そうじゃが。どうじゃ?」
「何かね」
「何か?」
「いいとは思うわよ」
 こう言うのだった。
「それでね」
「そうか。それではじゃ」
「けれどお父さん」
 娘はここで父に問うた。
「どういう風の吹き回しなの?」
「どういったとは?」
「昨日は猫に人の名前付けるの反対してたじゃない」
 彼女は昨日の話を出してきた。
「そうだったじゃない。それがどうして」
「だから幸せを祈ってじゃよ」
 娘と同じく昨日のことを話に出してみせた。
「だからじゃよ」
「昨日のね」
「それでじゃが」
「幸せね。それを願う人ができたのね」
 それを聞くと話を察した娘だった。中々鋭いところがあるようだ。
「成程ね」
「ではそれでいいのう」
 あらためて娘に尋ねる彼だった。
「それで」
「別にいいわ。じゃあ男の子が譲二で」
 まず彼の名前が決まった。
「それで女の子が奈々。それでいいわね」
「うむ。それでいい」
 満足した顔で頷くのだった。それからも彼はベンチで二人を見守るのだった。子猫達の成長と共に。それぞれ幸せに過ごしていったのを見届けたのだった。


つがいの名前   完


                2009・12・2

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