第六章
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「魔物にケンタッキーのおっさんってな」
「二つもいるのですね」
「どっちも滅茶苦茶強いからな」
少なくとも下級悪魔の彼ではてんで勝負にならないレベルだ。
「ちょっとやそっとじゃな」
「優勝出来ませんか」
「ああ、滅茶苦茶難しいな」
見えている者の言葉だ、そうした存在同士であるからこそ。
「不可能じゃないにしてもな」
「ではこれからもお願いしますね」
「個人のことはささやかに願って大きなことはか」
世界平和なり阪神の優勝なりだ。
「あんたは願うんだな、それに契約も難しい」
「女房同席なら」
「いいさ、もう」
諦めた言葉だった。
「それじゃあな」
「いいとは」
「ああ、こっちの言葉だよ」
悪魔のそれである。
「あんたのことはわかったさ、もういいよ」
「そうですか」
「また機会があれば会おうな」
やれやれといった顔でだ、リドルはサラリーマンに言った。
「その時には今よりも侘しい状況じゃなくなってくれよ」
「賑やかにですか」
「ああ、願いごとが適ってな」
「せめてお給料位は」
「全くだよな」
笑ってだ、リドルはサラリーマンに背を向けてだった。
その背中を向けたまま歩いて手を振ってその場を後にした、サラリーマンは彼と別れた後で一人で家に帰った。
リドルはサラリーマンと別れてから魔界に戻って仲間達に彼との会話を全て話した、そして強いラム酒をあおりながら言った。
「やれやれだぜ」
「ああ、その話を聞いたらな」
「俺達もそう思うぜ」
「実際にな」
仲間達も飲みつつ答える。
「しょぼくれたおっさんだな」
「小さくまとまっててな」
「それでいて善人でな」
「どうにも憎めないけれどな」
こう話していくのだった。
「それで契約しようにもな」
「それがよくわかってなくてな」
「何だかんだで契約にならないんだよな」
「ああいう手のおっさんは」
「日本のおっさん連中は」
「これが日本人全体だからな」
リドルは苦い顔でラム酒を飲みつつまた言った。
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