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サインペン
第五章

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「別に」
「それは何よりだな」
「とにかくですね」
「ああ、色を使ってメモとかしているとな」
 そうして仕事なりプライベートを過ごしていると、というのだ。
「よく覚えられるよ」
「自然と頭に入るんですね」
「目に強く入るからな、それに」
「それに?」
「愛生ちゃんが話してくれたからな」
 だからだというのだ。
「ヒトラーとかスターリンとか」
「独裁者の人達ですね」
「その名前を聞いてるとな」
 それだけだというのだ。
「余計にインパクトがあるよ」
「ううん、確かにインパクトは」
「どっちもインパクト強い人達だろ」
「強過ぎますよね、ですから私も」
 愛生にしてもだというのだ。
「覚えていたんですよ、この話」
「そうだよな、やっぱり」
「はい、じゃあ土御門さんも」
「メモする度に二人の顔が思い浮かぶよ」
 ヒトラー、そしてスターリンのそれがというのだ。
「だから余計に覚えられるよ、それでもな」
「あの人達の顔がいつも思い浮かぶことは」
「精神衛生的にはな」
 どうにも、というのだ。
「あまりな」
「やったことが酷いですからね、あの人達」
「酷過ぎるだろ、ムッソリーニはどうだったかわからないけれどな」
 イタリアの独裁者である、ファシズムの語源であるファシスト党の指導者としても歴史に名を知られた人物である。
「そっちの二人はな」
「ですよね、どうしても」
「その二人の顔を思い浮かべるからな」
 それで、というのだ。
「それはどうもだよ」
「じゃあイチロー選手がしているとかは」
「俺西武ファンなんだよ」
 悠来はこう返す。
「だからイチローはな」
「ヤンキースですからね」
「あそこのオーナー嫌いだしな、それにイチローこういうことしてるのか?」
「どうでしょうか」
「確かにイチローがしてたらいいけれどしてなかったら駄目だろ」
「そうですね」
「まあ愛生ちゃんに教えてもらったってことでな」
 このことから考えて、というのだ。
「愛生ちゃんの顔を思い出すことにするよ、あの二人より」
「有り難うございます」
 愛生はにこりと笑って悠来の言葉に応えた、悠来は確かにもの覚えがこれまでより遥かによくなった。そしてこのことからだった、悠来は愛生を意識して愛生もそうなって。二人は一緒になった、色のことからはじまって。


サインペン   完


                               2014・6・22
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