第四章
[8]前話
「こういうことじゃないかなってね」
「こういうことって?」
「うん」
この言葉からだ、彼は。
一旦自分のコートを脱いでだった。そのコートをルチアの肩にかけた。そのうえで彼女に対して微笑んで言った。
「これでどうかな」
「えっ、これって」
「これで暖かいかな」
こうルチアに言うのだった。
「ふと思ってこうしてみたけれど」
「暑いわ」
苦笑いになってだ、ルチアはそのロドルフォに答えた。
「もうね」
「そう、暑いんだ」
「ええ、まるで夏みたいよ」
「そこまで暑いんだ」
「ええ、けれどね」
「欲しいものがわかったんだね」
「暖かいもの、それはね」
ルチアはそのコート、ロドルフォが自分の肩にかけてくれたものに手を触れながらだ。微笑んでそのうえで彼に言った。
「こういうことだったのね」
「心だね」
「心が暖かいとね」
「一番暖かくなるわ」
「そうだね、じゃあね」
「有り難う」
ルチアは今度はにこりと笑ってこうも告げた。
「お陰でわかったわ」
「何が欲しいのかを」
「そしてその欲しいものを貰ったから」
それで、というのだ。
「有り難う」
「そう言ってくれるんだ」
「じゃあこれからね」
そして、というのだった。
「お部屋に帰って」
「うん、一緒にね」
「もっと暖まろう」
こう笑顔で二人で話してだった、ルチアはロドルフォにそのコートを返して。
二人で自分達の部屋に帰った、この上ない優しい暖かさを身体と心に感じて優しい笑顔になっている自分のことを思いながら。
コート 完
2014・8・24
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