第三章
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「私それがどうしてもわからないのよ」
「今は」
「冬になればわかるかしら」
「余計に寒くなったら」
「何か暖かいものが欲しいとはね」
そのことはわかっているのだ、感覚的に。
だがそれでもだった、それが具体的に何かはわからないからだ。
それでだ、どうしても言葉としてそこまでは出せないでいてだった。
ルチアはあれこれと考え続けそうして秋を過ごしていった、深くなっていた秋は終わり遂にその冬が来た。
パリの冬は本当に寒い、しかもだ。
日はすぐに落ちる。それはこの日もだった。
すっかり暗くなったパリの街をロドルフォと二人で歩きながらだ、ルチアは白い吐息を暗がりの中で出しながら彼に言った。
「本格的にね」
「寒くなってきたね」
「ええ、本当にね」
こう彼に言うのだった。
「パリの冬よ」
「観光客はこの寒さ知らないんだよね」
「そう、特に日本人はね」
この国から来た観光客はどうかというと。
「パリを日本と同じ位の気温だって思っていて」
「冬のパリに来るとね」
「その寒さに驚いているね」
「ええ、殆どの人がね」
「パリは違うんだよね」
日本の殆どの街とだ。
「北海道って場所は北にあるらしいけれど」
「それでもね」
「寒さが違うんだよ」
パリの寒さと日本のそれはというのだ。
「ここは凍死してもおかしくない場所だから」
「あまりにも寒くて」
「川だって凍るし」
これは本当のことだ、セーヌ川は凍るのだ。
「だからね」
「日本じゃ川は凍らないみたいね」
「そうしたことはないみたいだよ」
「日本はそれだけ暖かいのね」
「そう、だから同じ温帯にあってもね」
地理の授業では日本もフランスも同じ温帯に属している。日本は温暖湿潤気候でフランスは西岸大洋性気候である。
「違うからね」
「パリは温帯でもね」
「かなり冷帯に近いから」
これは欧州全体がそうである。
「そこを注意しないとね
「パリはね」
「本当にここは寒いよ」
ロドルフォも白い息を出しながら言う。
「相当にね
「そうよね」
「その寒さをね」
まさにとも言うのだった。
「わかっているのとわかっていないのとで」
「全く違うわね」
「そのことは実感するよ、僕も」
「ええ、私も。だから」
それでとも言うルチアだった。
「ずっと言ってることだけれど」
「何か暖かいもの」
「それが欲しいの」
この時もロドルフォに言うのだった。
「それがね」
「そうなんだ」
「一体何かしらね」
ロドルフォに顔を向けて半ば彼に問う形で言った。
「それは」
「そうだね、僕も考えてみたけれど」
「ロドルフォは何だと思うのかしら」
「ひょっとしたらね」
この前置きからだ、ロドルフォはルチアに答
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