第四章
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「私にもな」
「だからか」
「私も行く」
これが彼の決断だった。
「そうしてくる」
「では暫く会えないな」
「その間泳ぎの修行は怠るなよ」
にやりと笑ってだ、エウペモスはクリュサオルにこうも言った。
「私をがっかりさせるな」
「心配するな、それはない」
決してとだ、笑って返したクリュサオルだった。
「絶対にな」
「泳ぎは続けるのだな」
「泳ぐだけでなくな」
それに加えてだった、彼は。
その剣を見てだ、こう言ったのだった。
「こちらの方もな」
「修行を忘れないのだな」
「そうだ、ではいいな」
「うむ、帰ってくればな」
その時はというのだった。
「また競おう」
「再びな」
泳ぎのそれをしようとだ、二人で話してだった。
エウペモスはアルゴー号の探検に合流した、クリュサオルはその彼を見送り一人になった。それから暫く経って。
不意にだ、クリュサオルの宮殿に。
クリュサオルの従者が飛び込んで来てだ、主の座にいる彼に言って来た。
「クリュサオル様、アルゴー号の航海ですが」
「何かあったか」
「はい、どうも近頃です」
従者はクリュサオルに怪訝な顔で話していく。
「船を怪物が追っていまして」
「どういった怪物だ」
「百の頭を持つ巨大な海蛇です」
その怪物が、というのだ。
「アルゴー号を海中から追っています」
「アルゴー号は気付いているのか」
「いえ」
首を横に振ってだ、従者は答えた。
「全く」
「それ危ういな」
クリュサオルは冷静に言った。
「その海蛇は私も知っているが」
「相当な強さですが」
「海にいるラドンだ」
黄金の林檎を守っている百の頭を持つ竜だ、不死身でもありその強さは神々でさえ敵う者が少ない程である。
「まさにな」
「ラドンですか」
「そうだ、しかもラドンと同じくだ」
「不死身ですか」
「それだけに恐ろしい」
「ではアルゴー号の勇者達といえど」
「相手にすることは難しい、ましてやな」
クリュサオルはさらに言った。
「海だとな」
「海蛇の領域だからですね」
「余計に厄介だ、戦うにしてもな」
「アルゴー号の英雄達といえども」
「戦うことは難しい」
非常にというのだ。
「勝つことはおろかな」
「あの船にはエウペモス様もおられますが」
「海蛇と戦えるのは彼しかいない」
数多いアルゴー号に乗り込んでいる英雄達であろうとも、というのだ。
「泳ぎの達人でありポセイドンの息子であるな」
「あの方しかいませんか」
「そうだ、しかしだ」
そのエウペモスといえどもというのだ。
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