第二章
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「そうするか」
「私はそのままでもいいが」
エウペモスは海豚に乗って己の横にいるクリュサオルに顔を向けて不敵な笑みで告げた。
「海豚に乗ったままでもな」
「ほう、海豚よりも速く泳ぐというのか」
「そうしてみせるが」
「面白いことを言う、それでは」
では、と言ってだ。そしてだった。
クリュサオルは海豚から降りた、そして海豚に対して微笑んで待っている様に告げてだ。そのうえでエウペモスに言った。
「はじめるか」
「ほう、私に泳ぎで勝負するのか」
「言ったな、私もまたポセイドンの子だ」
「だからか」
「泳ぎでは誰にも負けない」
「私にもか」
「そうだ、だからだ」
海豚から降りてというのだ。
「勝負をしよう」
「それではな」
こう二人で話してだ、そしてだった。
彼らは実際に勝負をはじめた、お互いに並んで泳ぎ競争してだった。
一歩も引かない、一晩泳いだがそれでもだった。
決着はつかなかった、そして夜が終わり朝となり昼になった時にだ。
二人共だ、動きを止めてだった。
岩場の上に腰掛けてだ、それぞれ言った。
「もう無理だ」
「私もだ」
「引き分けたことはなかったがな」
「負けることもな」
「しかし今はな」
「引き分けだな」
クリュサオルもエウペモスも言うのだった。
「また今度勝負するか」
「そうするか」
「それでだ」
ここでだ、クリュサオルはエウペモスに顔を向けてこう言った。
「兄弟であるが」
「それと共にか」
「これから飲むか」
「そして馳走をだな」
「用意させるがどうだ」
「いいだろう、喉が渇いた」
しかも空腹だ、それならだった。
「共にな」
「そちらも楽しもう、そしてな」
クリュサオルはさらに言うのだった。
「これからもな、私の宮殿に来たい時は来るといい」
「それは私もだ」
今度はエウペモスが言った。
「何かあればだ」
「そなたの宮殿に来てか」
「私の宮殿は陸にあるがな」
「構わない、陸でも大丈夫だ」
海の神であるが、というのだ。
「私はな」
「そうか、なら都合がいいな」
「そなたも私の宮殿に来られるな」
「無論だ」
エウペモスは父を同じくしそのうえで友となった彼に答えた。
「私は海なら何処でもだ」
「行き来出来るのだな」
「幾らでも泳げるからな」
だからだというのだ。
「それ位は何でもない」
「わかった、では互いにな」
「楽しもうぞ」
こう約束をして実際にだった。
二人は友となり泳ぎの勝負をしながらそのうえでお互いの宮殿で馳走や美酒を楽しみ友情を深めていった、その二人を見てだった。
ポセイドンは己の宮殿においてだ、クリュサオルに対して問うた。
「そなた近頃エウペモスと共にいることが多いな」
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