第四章
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「ひょっとして」
「まさか。俺達にか」
「だって。海の上に出ている分であそこまで大きいんですよ」
ニルセンはそれを右手の人差し指で指し示しながらトムハウゼンに話す。
「それなら」
「海の中にある分はか」
「それより遥かに大きいでしょうから」
「背中にしても頭にしてもな」
「そlこまで大きいんでしたら」
彼等が今乗っている船もだというのだ。
「ほんの麦粒位でしょう」
「そんな大きさだからか」
「俺達のことも気付いていないんじゃないでしょうか」
「そんなものか」
「はい、だからでしょうか」
「そうかもな。言われてみればな」
ニルセンに言われてだ、トムハウゼンもそうではないかと考えた。そのうえで船長に対してこう言ったのだった。
「迂闊に近付いて相手が気付いたら」
「ああ、餌になるかもな」
「そうなるかも知れないですね」
「近付くのは危険か」
「ちょっと確かめにくいですね、ですが」
「御前はどうしてもだな」
「ちょっと調べてみたいです」
クラーケンが一体どんな生物かということをだ。
「それが俺の長年の願いでしたから」
「じゃあボートを出すからそれに乗って近寄るか」
トムハウゼンだけが、というのだ。
「そうするか」
「ええ、そうしてみます」
「じゃあ俺もお供します」
ニルセンも名乗り出て来た。
「実は俺もクラーケンがどんな生きものか確かめたいんで」
「じゃあ二人でなだな」
「ええ、行きましょう」
こう話してだ、そしてだった。
二人は船のボートを一隻借りてそれに乗ってだった、クラーケンに近付いた。そうして海の上に出ている部分の間近まで来た。
そうして触ってみるとだ、その感触は。
「蛸か烏賊か」
「鯨ですかね」
「これだけではわからないな」
「どうにもですね」
二人共だった、触っただけではわからなかった。
「海の上に長い間出ているのか乾いてもいるしな」
「これだけではですね」
「わからないな」
「はい」
「じゃあ潜ってみる」
海の中にだとだ、トムハウゼンは自分から言った。
「そして海の中にある身体を見てな」
「そうした確かめますか」
「ああ、そうする」
「それじゃあ」
こうニルセンと話してだ、そしてだった。
トムハウゼンは海の中に潜りクラーケンの身体を見るのだった。そうして海の中を泳いでクラーケンの身体を見るが。
クラーケンはあまりにも大きかった、その巨大さ故にだ。
海の中にある部分も一部分しか見えなかった、それでだった。
彼は何度も息継ぎに出ながら深く潜りそうして確かめたがそれでもだった。結局。
クラーケンの一部しか見られなかった、それでだった。
ボートに戻ってだ、こうニルセンに言った。
「駄目だ、大き過ぎてな」
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