第三章
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「それにやっとな」
「若しかしたらですね」
「巡り会えるのかもな」
そう思うとだったのだ、その顔が自然に緩んで笑っているのだ。長年探し求めていた恋人に出会えた様に。
「遂に」
「じゃあ」
「ああ、船長にな」
「俺が行ってきてお話します」
「頼むぞ」
トムハウゼン目を輝かせてニルセンに言った、ニルセンは彼の言葉を受けてすぐに船長のところに向かった、そして。
その船長がニルセンと共にトムハウゼンのところに来た、トムハウゼンよりも年配の彼以上に髭の濃い日に焼けた肌の男だ。その彼が西の島の様なものを見てこう言った。
「俺もここは何度も来てるがな」
「それでもですね」
「あんなものははじめて見た」
こうトムハウゼンに言うのだった。
「だからな」
「あそこに行ってですね」
「何か確かめてみないとな」
ならないというのだ。
「興味があるのは事実だが」
「それ以上に」
「海図に載ってない、しかも急に出て来た島ならな」
「どっちにしろ海図に載せないといけないですね」
「ああ、だからな」
それ故にというのだ。
「行くぞ、あそこに」
「わかりました、じゃあ」
こうしてだった、船は。
そこに向かった、するとだった。
そこには確かにあった、途方もない大きさのそれが。直径にして二キロはあろうか。それが海の上にあった。
それを見てだ、船長は言った。
「島に見えるな」
「そうですね」
トムハウゼンもそれを見て船長に答えた。
「あれは」
「そうだな、しかしな」
「上には何もありませんね」
「土でもない」
島なら土だ、岩も入れてだ。見ればそこはというと。
「のっぺりとしたな」
「何かの肌みたいですね」
「海の生物のな」
それだった、そこにあるものは。
「それを見ればな」
「あれはまさしく」
「クラーケンだ」
船長はトムハウゼンに対して答えた。
「おそらくな」
「そうですね、俺は遂にクラーケンを見たんですね」
トムハウゼンは目を輝かせてだ、長年の願いが適ったことを喜んだ。彼は遂にクラーケンをその目で見たのだ。
だが、だ。彼はここで生涯最大の謎にぶち当たった、それこそがだった。
そのクラーケン、正確に言うとクラーケンと思われる海の上に浮かんでいる巨大なものを一マイル程離れた場所で見ながらだ、トムハウゼンはその謎について言及した。
「ただ」
「あれが何かだな」
「はい、海の生物にしても」
「蛸か烏賊か」
「鯨か鮫か」
「他の生物にしてもな」
シー=サーペントでもだ、どれにしてもだった。
「何かだな」
「それが問題ですけれど」
「見たところ動かないな」
それは海の上に巨大な姿を見せているだけだ、トムハウゼン達の船に気付いてもいない様子だ。船
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