第二章
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「具体的にはな」
「そこも色々言われてるしな」
「本当にわからないな」
「クラーケンっていうのはな」
「何の生きものだろうな」
「百聞は一見に然ずっていうからな」
トムハウゼンはこの言葉も出した。
「俺は実際にクラーケンを見たいんだよ」
「実際にその目で見てか」
「確かめたいんだな」
「ああ、そうだよ」
まさにだ、その通りだというのだ。
「それが俺の願いだよ」
「そうか、それじゃあな」
「クラーケンを見ることか」
「それからだな」
「会うことすらそうそうないだろうけれどな」
それでもと言うトムハウゼンだった、ビールを飲みながらもその目ははっきりとしていてそれで言うのだった。
「会った時は確かめてやるさ」
「そうか、頑張れよ」
「クラーケンに食われない様にしてな」
「あいつは何かな」
「確かめろよ」
「絶対そにそうしてやるさ」
彼は仲間達に決意を見せた、そうして海に出たその時は船の上からいつもクラーケンを探した。そうして何年も過ごし。
ある日だ、彼がグリーンランドの方に出ているとだ、若い船乗りであるトムス=ニルセンが遥か西の方を指差してトムハウゼンに言った。
「トムハウゼンさん、あそこですけれど」
「どうした?」
「はい、あれです」
西の方を指差しながらの言葉だった。
「あれ島ですかね」
「あそこには島はないぞ」
海図にも載っていないしこの辺りは何度も来てよく知っている、それでトムハウゼンはニルセンにこう答えたのだ。
「全然な」
「そうですよね」
「しかしな」
それでもだった、トムハウゼンはニルセンの指し示す方向を見ている、そのうえでその目に見えているものを確かめつつ言うのだった。
群青の大海原、清青の空の下にあるその海の中上にだ、青ではない何かがあった。それを見て言うのだった。
「確かにあるな」
「そうですよね」
「あの距離であの大きさとなるとな」
「島、ですよね」
「ああ、しかしな」
「それでもですよね」
「あちらに島はない」
このことは確かだというのだ。
「絶対にな」
「じゃああれは」
「ちょっと船長に言ってみるか」
「船長さんにですか」
「ひょっとするとな」
ここでトムハウゼンはにやりと笑った、そして言うことはというと。
「あいつかも知れないな」
「あいつって言いますと」
「俺がいつも言ってるな」
「クラーケンですか」
「ああ、あいつかもな」
若しかして、というのだ。
「だからな」
「船長がよしと言えばですね」
「あそこに行ってな」
そうしてというのだ。
「確かめるな」
「クラーケン、あの伝説の」
「俺はずっと探してたからな」
そのクラーケンを、というのだ。
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