第六章
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「何が何なのか」
「そうでしょう、ですから」
「はじめて来た人にはですね」
「長老のお部屋もわからないので」
「この街の顔役の方ですね」
その長老と呼ばれた者がだ、ロートはこのことは察することが出来た。
「そうですね」
「はい、長老がです」
「この街の顔役で」
「街のまとめ役です」
まさにそうだというのだ。
「非常によく出来た方です」
「では今から」
「お呼びしました」
携帯を使った後での言葉である。
「ここは地下でも電波がつながりますので」
「すぐにですね」
「来てくれます」
その長老がというのだ。
「それまでお待ち下さい」
「それでは」
このやり取りからだった、ロートはリンデンと共にその長老が来るのを待った。やがてかなり高齢とポも割る顔中皺だらけの髪の毛は一本もない背中の曲がった老人がやって来た。しかしその老人はというと。
ロートは長老の顔を見てだ、すぐにこう言った。
「貴方はドイツ人ではないですね」
「ほう、わかるか」
「ラテン系ですね」
その顔立ちだった、明らかに。
「イタリア人かスペイン人か」
「イタリアのナポリ生まれじゃ」
「そこから来られたのですか」
「随分前じゃな、世界恐慌前か」
「その頃にですか」
「来てな、そしてな」
この街に住んでいるというのだ。
「長い間住んでいて街の長老にさせてもらっておる」
「そうですか」
「仕事は靴職人じゃよ」
長老は自分の仕事のことも話した。
「とはいってもとっくに息子に店を譲って今では孫が店をやっておる」
「靴屋をですね」
「そうじゃ、曾孫が子供を作ったところじゃ」
「それはいいことですね」
「ほっほっほ、それでわしをここに呼んだのはあれじゃな」
「おわかりですか」
「この街のことじゃな」
「はい、私は学者でして」
そしてというのだ、ロートはリンデンをちらりと見ながら長老に話した。
「彼女は助手です」
「宜しくお願いします」
リンデンもここで長老に笑顔で挨拶をした。
「僕のことも」
「可愛い娘さんじゃな」
「可愛いでか、僕が」
「学者さんにしておくのは勿体ない。わしにはまだ連れ添いがいるから結婚は出来んが」
長老はリンデンに飄々とした笑顔で話していく。
「うちの曾孫の一人の嫁にどうじゃ」
「えっ、長老さんのですか」
「うむ、どうじゃ?」
「それはその」
「答えはすぐでなくともよいぞ。とにかくな」
長老はリンデンにそうした話をしてそのうえでだった、あらためて。
ロートに顔を向けてだ、彼に言った。
「まあ立ち話も何じゃ」
「はい」
「近くの甘味処にでも入ってな」
「あちらですね」
見ればすぐ近くにだった、和風の店があった。木造で書かれている言葉もドイツ語
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