番外編
その6 ロード・バロン
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、戒斗は満身創痍で、凌馬は無傷で平然としていた。分かり切った結果だった。それでも湊には苦しい光景だった。
「ガキの頃から、俺はずっと耐えてきた! 弱さという痛みにな!!」
戒斗が手近なヘルヘイムの果実をむしり取った。
――戒斗の肉体にはヘルヘイムの毒素が満ちている。その状態でヘルヘイムの果実を手にしたらどうなるか。湊にさえ想像がつかなかった。知性なきインベスへ堕ちるのか、あるいは、それすらも駆紋戒斗は超えるのか。
戒斗がついに果実にむしゃぶりついた。
咆哮。それはまさに手負いの獣の上げる声。
駆紋戒斗が変貌していく。赤と黄で彩られたステンドグラスのような体表。赤いマント。所々にバロンのモチーフが残っている。
目の碧色が、凌馬を睨み据えた。
それから湊は、かつて付いて行くと決めた男が、今付いて行っている男に翻弄され、ボロ雑巾のように弄ばれる一部始終を、声なく目で追うしかなかった。
(私には何の手出しもできない。ドライバーがなくて変身できないから)
それ以上に、圧倒されて声が出なかった。
だから、どれだけ凌馬が痛めつけられても、「プロフェッサー」と呼びそうになった自分を何度も抑えた。
『俺の真理は、この拳の中にある!!』
戒斗が変異したオーバーロードは、凌馬を殴り飛ばした。それこそ凌馬が壁にめり込む勢いで。
凌馬は何がおかしいのか、壁にめり込んだまま笑い声を上げた。
「そんな姿で、っ、長く、保つものか……いずれ貴様は破滅する! それが貴様の、うん、め……」
凌馬が壁から落ちた。湊は急いで駆け寄り、凌馬の上体を抱え上げて脈を取った。――死んで、いた。
「果たしてどうかな。俺は誰にも屈しない。俺を滅ぼす運命にさえも」
戒斗が背を向けて歩き出した。
湊は腕の中の凌馬の亡骸を見下ろし、その亡骸をその場に横たえた。すぐ近くに落ちていたゲネシスドライバーを拾い、戒斗を追いかける。
(破滅の運命だとしても構わない。私は戒斗の行く道を付いて行く)
パーキングを出ると、まるで待っていたかのように、サガラが立っていた。
「いい顔をするようになったなあ。駆紋戒斗」
「――ふん。何をしに来た。蛇ふぜいが」
サガラが手を振ると、ホログラムのような画面が現れた。映っているのはガレージ内の様子だ。
倒れた舞に、ヘキサが血を飲ませている。すると舞の皮膚から硬い体表が崩れ落ちた。だが、悦びに沸く間もなく、舞の体は黄金の光に包まれた。
そして、舞は湊が全く知らない、金と白の少女となり、仲間と言葉を交わしてから、消えた。
「これは……舞さんは一体」
「あいつは“はじまりの女”となって、時
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ