紗矢華相手です
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まま、居なくなることは許さない。
誰かがそれを望んだとしても、明人自身がそれを肯定したとしても。
紗矢華はそんなことを望んでいないし、肯定する気もない。
だって、私は―――貴方の事が。
手を伸ばせば、届く。
必死に、掴み取ろうとする想いがあれば届くはず。
だから伸ばす、ひたすらに伸ばす。
逃げるな。自分もこれからは逃げないから―――私の想いを聞いてから逃げなさい。
その想いをのせた手が、彼の元に。
「……はっ。」
紗矢華はそこで目覚める。
自分はどうやら夢を見ていたみたいだ。
意識が覚醒するなり、視線を周囲に向ける。
景色が変化していた。自分が眠っている間に、他の医療機器が無くなっているのだ。
それだけではない。
変わっていたのはそれだけではなかったのだ。
「紗矢華。」
自分の名を呼び、見詰めてくれる少年の姿があった。
上体をベッドから起こして、紗矢華の手を握り返す明人の姿があった。
紗矢華は、絶句していた。
目に涙を浮かべながら、流しながら―――歓喜に打ち震える。
「……ずっと、手を握っていてくれたんだな。ありがと。」
傍に居てくれてありがとう、と感謝の気持ちを込めて明人は微笑む。
もはや、我慢の限界だった。
意識が目覚めたばかりの病人相手とはいえ。
構わず、紗矢華は自ら明人を抱き締めた。
「明人っ! 馬鹿明人、心配かけるんじゃあないわよまったく!!」
「ははっ。……悪いな紗矢華、それとありがと。」
「もう許さない。別任務で離れ離れだし、死にかけるし、絶対に離してやらないんだから。雪菜みたいに、今度は私が貴方を監視してあげるわ。感謝しなさいよ、じゃないと心配なんだから。」
矢継ぎ早に告げられた、精神的に重たい女のような一言。
紗矢華はこんなことを言う女の子だったのか、と。
彼女の新たな一面を知るキッカケを得た明人は微笑みながら。
「それは嬉しいんだけどさ、紗矢華。」
「なによ、なんか文句でもあるわけ!?」
「胸、当たってる。」
「―――っ!! 馬鹿ぁぁああああ!!!」
「ちょ待て、俺病人、怪我人だっての。こら、拳振り上げんのやめろって!?」
「うるさいこの、変態スケベ!!」
―――目覚めてからの明人と紗矢華の関係は、意外と進んだのであった。
けれど距離は縮まったものの、依然として離れたままであるのは。
紗矢華が変わらずツンデレっているからな
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