下忍編
悪夢
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か足を動かし、這いずるような態勢でカトナはその少年の元に駆け寄っていく。
これはいつかの繰り返しだと、カトナは気が付きながらも少年に手を伸ばす。
少年はカトナに気が付かない。
自分の中に荒れ狂う感情に身を任せて、少年はぐるぐるとまわり、チャクラに全身を任せる。
青い目が真っ赤になっていき、少年の体から、まるでコップの中に水を満たし、それ以上に水を注いだかのように、少年の体から赤いチャクラが漏れだした。
じりじりと、肌を焼いていく猛火のチャクラにより、少年の血がどくどくと流れ出しては蒸発していく。カトナの元にまでその熱気は届いてきて、熱いという感覚が全身を支配する。
必死に伸ばした手が、理性で統率されているとは到底思えないほどの荒々しさともに噴出したチャクラで弾かれ、届かない。
カトナはそれでもなお近づこうとして、伸びてきたチャクラに喉を切り裂かれる。
痛みは、なかった。
ただ、あつかった。
喉を押さえ、その場に崩れ落ちたカトナを見て、少年が目を見開く。
その手がどんどん金色の毛が生えていき、獣に近づいていくのが、目にうつる。
制御しきれないチャクラが渦となってうねり、カトナの体を切りさいていく。
少年が必死にチャクラを制御しようとするが、制御しきれない。
ばちりと、また火花が散る音がし、燃え盛る火の中、呆気にとられたように立ち尽くし、カトナを傷つける自分を止めようとする少年の姿に、叫び声をあげようとしたが、その喉からは何も出ない。
声帯を切りとられているせいだと、分かっている。べろりと剥がれた皮と、そこから流れ出す血液、そして全身をくまなく荒らす激痛もわかっている。
けれど叫び声を上げようとしてしまったのは、それしか、少年を止めることが出来る選択肢が思いつかなかったから。
こんな場面は知らない。
こんなことは見たことが無い。
けれど、何故だか、酷くそれが当たり前の様である気がして、それはずっとずっと望んでいたような気がして、カトナはじっと目を細めて睨み付ける。
握りしめた拳に爪が食い込んで、血がながれる。しかし、不思議といたくなく、ああ、これは夢なのかと唐突に気が付いた。
そして次の瞬間、カトナの全身を、チャクラが貫いた。
血液が飛び散る。臓腑が痛む。
少年のくちが、笑みを描いた。
それは、望みだった。
心臓が、止まる。
生きようとしていた呼吸が止まり、精神が死に至り、体が動かなくなる。
光が急速に失われていき、色がなくなり、カトナの立っていた場所が崩れ、慌てて目をつぶる。
衝撃が幾つか体に響き、耳に声が響く。
―お前は何にも守れない。
向こう側で笑う声が、聞こえる。
一体誰が笑っているのだと思い、瞼を上げたカトナは
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