第1部 ゼロの使い魔
第5章 使い魔の1日
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嫌いなので、ウルキオラを警戒するのが普通である。
ましてや人間でもないのだ。
警戒しないほうがおかしい。
しかし、ウルキオラは魔法を盾に平民を苦しめるメイジとは違う。
ウルキオラは基本平民も貴族も自らの脅威となるもの以外に力を使うことはない。
それは、優しさではなく単に必要ないからである。
だか、マルトー達平民はそれを『優しさ』だと勘違いしているのだ。
ウルキオラが専用の椅子に座ると、シエスタがさっと寄ってきてにっこりと笑いかけ、温かい紅茶とショートケーキを出してくれた。
「感謝する」
「今日のケーキは特別ですわ」
シエスタは嬉しそうに微笑んだ。
ウルキオラは一口ケーキを頬張る。
「うまいな…」
そう言うと、包丁を持ったマントー親父がやってきた。
「そりゃそうだ。そのケーキは、貴族連中に出してるものと、同じもんさ」
「あいつらはこんなものを毎日食べているのか?」
ウルキオラがそういうと、マルトー親父は得意げに鼻を鳴らした。
「ふん!あいつらは、なに、確かに魔法はできる。土から鍋を作ったり、とんでもない炎の玉を吐き出したり、果てはドラゴンを操ったり、たいしたもんだ!でも、こうやって絶妙な味に料理を仕立て上げるのだって、言うなら1つの魔法さ。そう思うだろ、ウルキオラ」
ウルキオラは紅茶を啜ると言った。
「そうだな」
「いいやつだな!お前はまったくいいやつだ!」
マルトー親父は、ウルキオラの首根っこにぶっとい腕を巻きつけた。
「なあ、『我らの勇者』!俺はお前の額に接吻するぞ!こら!いいな!」
「その呼び方と接吻はやめろ」
ウルキオラは言った。
「どうしてだ?」
「俺は勇者じゃない」
マルトー親父は、ウルキオラから体を離すと、両腕を広げて見せた。
「お前はメイジのゴーレムを溶かしたんだぞ!わかってるのか!」
「ああ」
「なあ、あの魔法はなんだ?なんであんなにも強力なんだ?教えてくれよ」
マルトー親父はウルキオラの顔を覗き込んだ。マントー親父は紅茶を飲みに来たウルキオラに、毎回こうやって尋ねるのであった。
その度にウルキオラは同じ答えを繰り返した。
「さあな…知らん」
「お前たち!聞いたか!」
マルトー親父は、厨房に響くように怒鳴った。
若いコックや見習いたちが、返事を寄越す。
「聞いてますよ!親方!」
「本当の達人というのは、こういうものだ!決して己の腕前を誇ったりしないものだ!見習えよ!達人は誇らない!」
コックたちが嬉しげに唱和する。
「達人は誇らない!」
すると、マルトー親父はくるりと振り向き、ウルキオラを見つめた。
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