二心同体の愚者
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児とは思えない。透真の影響で知能は高くなっているが、それだけでなく本人の元々の才質もありそうである。まあ、環境がそうさせたともいえようが。
「ねえ、先生。先生は、別世界の僕なんだよね?」
「ん、ああ。名前こそ違うが、生年月日も両親も同じだからな。そうだろうな。だが、俺は俺。お前はお前だ。気にすることはない」
「そっか、それじゃあ今度はあなたにききたいんだけど……えーと」
「待て、貴様の説明は要領をえなさそうだからな、直接読む」
『這いよる混沌』は透真にしたように透夜の考えを読む。読んで爆笑した。
「フッハハハハハハハハッ、ハハハハハハハ。1つ聞く貴様、本気か?」
『這いよる混沌』の短い問に眩暈でふらつく頭を抑えながら、透夜は頷く。
「できる?これなら一緒でいいよね?」
「ああ、できるとも。ああ、許してやろうともさ。誇れ小僧…いや、八神透夜よ。私をここまで愉快にさせたものはそうはいない。だが、分かっているな?」
愉悦に体を震わせる『這いよる混沌』は最後の確認を取る。
「うん、やっちゃって!」
「よかろう」
「待て、一体何をするつもりだ?!」
透夜の意思を尊重して黙っていた透真だったが、不穏な気配を感じ思わず口を出すが、すでに時遅し……。
「喜べ八神透真。貴様の相方は、貴様にも私にも思いつかなかった貴様と一緒にいるための第四の道を示したぞ。これだから、人間と言うのはおもしろいのだ。私の予想もつかないことをやってのける!」
「透夜が?!」
驚愕とともに透夜を見つめる透真を尻目に愉悦する『這いよる混沌』は、両腕を伸ばし、片方を透真に、片方を透夜の胸に置き、同時に貫いた。
「なっ」「ゴフッ」
貫かれた両者から短い叫びがもれる。
「な、なんのつもりだ?」
「早とちりするな、別に殺すつもりはない。その証拠に、痛みも出血もなかろう?」
かなり強烈な衝撃を受け貫かれてはいるものの、確かに痛くはないし出血もない。それは透夜も同様だ。
「じゃあ、一体何のために……」
「なに、取引相手を変えただけだ。貴様より八神透夜の方が、おもしろい提案をしてくれたのでな。安心しろ、貴様に損はない」
「待て、それじゃあ透…夜は…ど…う……」
そこまでいいかけて、透真は意識が途切れた。
「先生、起きて。先生」
「とうや、透夜か?お前、あいつになにを言ったんだ?!というかここは?」
目をやれば、先ほどまでいた時計の空間ではない。それは見慣れた彼の生前の居室だ。
「俺の部屋…?
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