二心同体の愚者
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「な、何でだよ?!」
「お前はおかしいと思わなかったのか。先ほどからこの小僧が一言も喋ってない事に」
「なっ!」
慌てて見慣れた少年を見る。それはありえないことだった。透真と二心同体である透夜であったからだ。なぜ、鏡も使わずに自分が外側から透夜を見れるのか。それは己が独立して存在するということ他ならないと今更ながらに透真は気づいた。
「こ、これは?!」
「そんなに驚くことでもあるまい。ここは人間が集合的無意識と呼ぶものが存在する場所。貴様が独立した精神である以上、ここでは独立した存在となる。当然のことだろう?もっとも、ここで自己を確立し保てない者、すなわち適性なき者は忘我しああいう状態となるわけだ」
「と、透夜!しっかりしろ!」
慌てて近寄り、棒立ちする透夜を揺する透真。そのかいあってか、透夜の目に意思の光が戻る。
「せ、先生?先生なの?」
「そうだ、透夜。俺だ、よかった!」
歓喜のあまり透夜を抱きしめる透。
「く、苦しいよ先生。それより本当に大人だったんだね」
「あ、ああ。そういえばそうだな」
指摘されて、改めて気づかされる透真。今の彼は、生前の夢を実現させようとしていた姿だ。
「ほう、あそこから我を取り戻すとはな。貴様らの間には余程のつながりがあると見える。
では、改めて問おう。小僧、貴様の名は?」
「ぼ、僕は透夜、八神透夜。あなたは誰?」
無貌に恐怖と驚愕の念を抱きながら、透真の手を強く握りながら震える声で透夜は答えた。
「私は『這いよる混沌』。詳しいことはそやつに聞くがいい。手助けありとはいえ、今度は言うことができたか。いいだろう、貴様も合格だ。
さて、貴様らには三つの道がある」
「三つもあるのか?」
「そうだ。
一つは言うまでもないだろうが、諦めて潔く死ぬこと」
「ありえないな。それなら、そもそもこんなとこきてねえよ」
「だろうな。では貴様らが選ぶべき道は二つだ。
一つは、貴様が『ペルソナ』を手に入れ、貴様が戻る道
一つは、小僧が『ペルソナ』を手に入れ、小僧が戻る道」
「え、二人一緒には戻れないの?」
「当然だ、本来傍観者たる私を引っ張り出したのだからな。それにこの世界の『ペルソナ』は原則的に先天的なものだ(後天的に得る方法もないわけではないがな)。それを貴様らにくれてやる以上、当然報酬を貰う。まして、私がくれてやる『ペルソナ』能力は、この世界のものではないからな」
要するに、『PERSONA3』のものではなく、『PERSONA』『PERSONA2』のものであるということだろうと透真は理解した。それはむしろありがたい話だ
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