二心同体の愚者
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うのに。そして、次の瞬間誰かに抱きかかえられたところで、彼は心中で絶句することになる。透真を抱き上げたのは、他ならぬ彼の母親であったからだ。彼の記憶にあるよりかなり若いことに戸惑ったが、彼には不思議と母であるという確信があった。それは父親を見た瞬間も同様だ。生年月日も同じなら、後に連れて行かれた自宅の住所も同じで、自宅の外観も同じ。唯一の差異は、彼、いや、彼の『宿主』につけられた名前が微妙に異なるくらいであった。
そう『宿主(・・)』である。彼につけられた名前ではない。運命は残酷であった。透真は自分の意思で体を動かすことはできず、『宿主』である透夜の中で、見ているだけしかできなかったのである。これには、透真も悲嘆するほかなかった。せっかく、変な形とはいえ生き延びたというのになにもできないのだから。
しかし、そういった感情も時間が経つに連れて薄れていく。透真は己の死をどうにかこうにか受け容れることができた。よく考えれば、致命傷であったから、己の死は避けられないものだったことを理解できたし、宿主は別世界の自分かもしれないが、それと同時に己とは別人であると悟ったからだ。それに絶対の死の運命を迎えたにも関わらず、(生きているといえるかは分からないが)こうして意識を保っていられるのだ。人生の余禄とでも思うべきだという結論に至ったのだった。
それに何より、宿主たる少年の中は心地よかったし、その人生を客観視するのは思いのほか楽しかったからだ。結果、己と同様に両親に愛され、すくすく育っていく透夜に愛着がわいてしまい、歳の離れた弟のようにすら思っていた。まあその分助言したくても、声も届かないので、それでやきもきすることになったのだが……。
透夜に声が届いたときは歓喜したが、素直には喜べなかった。それは透夜が全てを失った時であったからだ。他に何も頼れるものがなく、真実孤独となって、初めて声が届くとは何と言う皮肉であろうか。
そして、今日このときまで、二人で一人、二心同体でやってきた。時に孤独を癒す友として、時に様々な知識を教授する師として。苦楽をともにしてきた。だが、それも終わりを迎えようとしている。少年の理不尽な死という形で……。
(なんで透夜がこんなめにあわないといけないんだよ!何が崇高なる目的の為にだ!桐条の狂人が、老害はとっと死ね!
しかし、実際にその立場になるとゲームの比じゃない胸糞悪さだな。ストレガが、ああなっちまうのも分かるわ……って、そんな場合じゃない。どうにかしないと、透夜が死ぬ!)
透夜の中でどうにか生存の為の道を必死に思索するが、全く思いつかない。それも当然である。そも、この施設に連れてこられ、偶然耳にした『桐条』と『ペルソナ』の単語。そして、『ストレガ』メンバーであるチドリとジンらしき子供
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