二心同体の愚者
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異の眼で見られることになるが、運命とは皮肉なもので、それが逆に彼を救った。そのありえない知能の高さと精神の発達具合から、少年は希少な実験体として扱われたからだ。
『対シャドウ兵器』の前身たる『人工ペルソナ使い』を製造する為の実験体。それが透夜をはじめとして集められた孤児達の役割であった。先天的『ペルソナ使い』である桐条の令嬢からヒントを得て、同年代から3歳差までの範囲で買い集められた。
『ペルソナ』は人間の精神を根源とする力であると考えた研究者達は、実験体の精神を極限状態に追い込むことで強制的に『ペルソナ』に目覚めさせようとした。極限状態、即ち生命の危機である。密室に捕獲したシャドウと薬物投与した実験体を閉じ込め、覚醒を促す。そんなことが実験体である孤児達の命を省みずに何度も行われた。
その結果は悲惨の一言に尽きる。実験体の殆どは状況を把握することすらできず、わけも分からずにシャドウに殺された。極一部の者が覚醒し、見事にペルソナを発現させた者もいたが、薬物投与も用いた無理矢理の覚醒のせいか、シャドウを倒した後、自身の『ペルソナ』を制御できずに殺されるということが頻発した。そもそも『ペルソナ』という異能は誰もが発現するものではなく、むしろ希少な異能であるから当然といえば当然の結果であった。
この時『ペルソナ使い』の適性を調べる手段はなく、それゆえに世間に露呈しにくく、かつ研究者達にとって死んでも構わない命である孤児達が実験体用いられたのだった。用意された実験体100名の孤児の内、実にすでに被験した90名の全てが死亡する結果となった。90名もの孤児の命を費やしてできたのは、暴走するペルソナを制御するための薬。その命の結晶たる薬ですら、使用すれば寿命を縮めるものであるのだから本当に救えない。
幸いにして、透夜は希少な実験体として、残り10名の中に残ることはできた。しかし、彼にとって不幸だったのは、10名の中で唯一『ペルソナ使い』としての適性が全くないことであった。そして、この時には研究者達も、ある程度『ペルソナ使い』としての適性を調べる手段を確立しつつあったことだ。
当然、もっとも適性のない透夜は、残った10名から弾かれ、唯一人処分されることになった。しかし、それに待ったをかけた人物がいた。たまたま、施設を視察に来ていた元凶たる老人であった。
もっとも、老人に透夜を助けようという意図は全くない。老人は娯楽の一環として、少年の虐殺ショーを見たかっただけである。その証拠に、透夜は着の身着のままであり、通常実験体に与えられる防護服すら着ていないし、覚醒を促すための最低限の投薬処理(劇薬)すらされていないのだから。
今までの実験体の中で、最低最悪の状態で実験に臨まされた透夜が今の今まで生きているということ自体、奇跡と
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