二心同体の愚者
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がいなくなるんら死んだ方がましなんだ。押し付けてごめんなさい!」
ただ一人泣きじゃくる幼子が残るばかりだった。
「戻ったか。うまくいったようで何よりだ」
透真の顔をしたものが、目をさました透真を迎えた。
「『這いよる混沌』、貴様その顔なんのつもりだ?!貴様、俺達に何をした?」
「これは失敬、お気に召さなかったかな?安心するがいい、貴様の代わりに八神透夜を報酬にいただくなどという無粋な真似はしておらん。むしろ、無料奉仕だ。いや、久方ぶりの心からの愉悦という対価は頂いたがね」
「だから、一体何をした?!」
「ふふ、とぼけるのはやめるのだな。もう、分かっているのだろう?己に『ペルソナ』能力が宿っていることを。『ワイルド』ではないが、この世界では本来ありえぬ力だ。大切に使うのだな」
「この体、それはつまり……」
薄々理解していた。自分の中に何か暖かいものが宿ったことを。そして、肉体が今までにない活力を帯びていることを。何より、視界が低くなっていることを……。
「まあ、折角だ。説明してやろう。お前は並行世界の八神透夜だ。つまり、お前もある意味では、八神透夜のペルソナの1つといえるわけだ。そして、その逆も然り。ゆえに、八神透夜は己をペルソナ化し、お前の心象世界に宿ることで、お前を『ペルソナ使い』にしたわけだ。そうすれば、お前と一緒にいられるし、私に対価を払う必要はなくなるというわけだ。まあ、正しい判断だったと思うぞ。貴様の方が適性は高いからな。もし、逆だったら、暴走の危険があったからな」
「き、貴様!」
淡々と語る透真の姿をした『這いよる混沌』に殴りかかる。しかし、悲しいかな。今の八神透夜(・・・・・)の体では到底背が届かない。あっさりと止められる。
「私は全てを嘲笑う者であり暗き者『這いよる混沌』だぞ。たかが、並行世界の知識を有するに過ぎない人間が、あらゆる時空に存在する私を思うように使えるとでも思ったか」
透真の顔で嘲笑を浮かべて、無貌の神が言う。
「俺は……」
「作業に対する対価は貰ったが、私を呼び出した対価は貴様に払ってもらおう。貴様はこの世界に起きる2つの滅びに介入しろ。それが貴様の払うべき対価だ!貴様の生き様、精々嘲笑ってやろう」
唐突に音と視界が戻ってくる。そして、今までになかった体の痛み、呼吸しているという感覚から実際に体を動かしている実感が分かる。顔を上げれば、正面から迫るシャドウの姿が目に映る。
あれほどまでに感じた死の危険も、今や全く感じない。矮小で滑稽にしか映らない。多大な喪失感とそれ以上の充足感を得ながら、透夜の姿をした
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