二心同体の愚者
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さて、この物語の主役となるのは、
前世の記憶ならぬ「並行世界の自分」の魂を宿して生まれた少年。
そして、死を経験しながらも、もう一人の自分というべき存在の中で傍観するしかなかった男。
両者が真の意味で出会う時、1つの生命が生まれ、真実『FOOL(愚者)』たる旅人が誕生する。
その旅路は、さてはて悲劇か、恐怖劇となるか、あるいは喜劇となるか……。
では、幕を上げるとしよう……生まれながらにして『死』を内包した『FOOL(愚者)』の物語を!
少年は異常である。何が異常と聞かれれば、外見からは全く判別できない。日本人らしい黒髪に黒瞳、容姿も整ってはいるものの美少年という程でもないし、別段年齢以上に発育しているわけでもないからだ。
しかし、少年『八神 透夜』は異常と称される。全国津々浦々から、『桐条』によって集められた孤児達の中でも、彼はとびぬけて異常であった。その知能の高さ、そして常人ならばとうに死んでいるであろう空間で未だに生き残っていることが何よりその証左であった……。
(透夜!透夜!しっかりしろ!正面、来るぞ!)
頑強に施錠された密室で、『シャドウ』と呼ばれる怪異が死の運命を伴って、5歳になって間もない少年に眼前から迫り来る。そんな中で、『彼』は必死に宿主に呼びかける。『ペルソナ使い』としての適性が全くない透夜にとって、いくら生命の危機という極限状態におけれても全くの無駄であった。当然、『ペルソナ』の発現はなく、迫り来るシャドウの魔の手から逃げ続けることが精一杯であった。その逃げることすら、『彼』の指示と励ましがあったからこそできたものであり、それも限界が近づいていた。
「大丈夫、まだ走れるよ……ゲフッ」
透夜は、『彼』の声に朦朧とした意識をどうにか覚醒させ応える。全身傷だらけで、咳をすれば血が混じる。満身創痍もいいところだが、それでも透夜は諦めるわけにはいかなかった。
「一人は嫌だから!」
透夜にとって、『彼』は唯一無二の友であり、かけがえのない師である。何よりも全てをなくしたあの日から常にそばに居て孤独を癒してくれたのだ。そんな『彼』を孤独になどできるはずがなかった。ましてや、己のまきぞえにするなど絶対にできない。震える手足に力を入れ、こちらに向かってくるシャドウの動きを見る
「GYAAAA-----!」
人ならざる雄叫びを上げるシャドウを前転することで、すれ違うようにしてどうにかわす。実に10回目の回避である。
「それにしても、よく躱すのう。知能レベルが高いとは聞いていたが、大したものじゃ。美鶴より年下であるというのに、まだ目が死んでおらぬ。大したものよ、最低限の投薬すらしておらんのだろう?」
その様子を貴賓室に設けられた
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