何を捨ててでも掴んであげる
[1/10]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
ハートフィリア邸と同じくらいに大きい豪邸があった。
だだっ広い土地には古びた小屋や放置された馬車があるのに、人は誰もいない。ナツが鼻をひくつかせるが、誰の匂いも感じないようだ。
「ここが、カトレーン本宅…」
ゴクリと唾を呑み込んだルーが呟く。ハートフィリア邸を見て中に入った事もある彼だが、その時とは違う緊張感を感じ取っているようだった。
大きな門を開き土地の中に入ると、エルザが口を開く。
「これが恐らく最後の戦いだ。相手はシャロン……魔法都市に住んでいる以上、奴も魔導士。どれほどの実力があるのかは解らんが、気を抜くな」
全員が頷く。
油断なんて出来ないし、気なんて抜けない。ここで負けたら仲間の努力の全てを無駄にしてしまう。
ティアを助ける為にここに来たのなら、彼女を助けるまでは終わりじゃない。誰1人欠ける事なくギルドに帰る。その為に、彼等はここまでやってきたのだから。
「で、ティアはどこにいるんだっけ?」
「“星詠みの間”だろ。……アイツが、言ってた」
ハッピーの言葉にアルカが答える。
母親であるシグリットをどう呼ぶか迷ったのか間を開けて呟かれた言葉に、ナツ達は思わず目線を落とす。それに気付いたアルカは「んな顔すんなよ、揃いも揃って」と苦笑した。
「あ」
と、その空気をぶち壊すのはいつもの事ながらこんな時でも空気クラッシャーなルーだった。
その目は真っ直ぐにある一点を食い入るように見つめている。
「どうしたの?」
「見て、あれ」
ルーシィが問うと、ルーは見つめる一点を指さした。
一体何が、と思いつつそちらに目を向け―――――固まる。
それは本宅最上階。他に比べ窓の少ない最上階の中央辺りにある窓。それがただの窓であるならば、見ただけで固まったりなんてしない。ルーだって、食い入るように見つめない。
問題は、その窓から見える光景だった。
「……」
全員が唖然としたのは尤もだろう。
内側―――つまりは部屋の中から、拳やらブーツの裏側やらが見えている。しかもブーツは見覚えのある黒いロングブーツだ。
ガン、ゴン、と音を立てる一撃の中に見慣れた水の弾丸があるのを、ナツ達は誰1人として見逃さなかった。
「あそこか」
「だな」
「あい」
「それ以外考えられないよう」
「違ったらそれはそれでウケるけどな」
「少しは大人しくしてろよなー」
「アンタにだけは言われたくないと思うわ」
それぞれがそれぞれに感想を述べる中、拳や蹴り、水の弾丸は窓にヒビの1つも入れられていない。
ティアの操る大海の別名は、“超攻撃特化魔法”。攻撃する事だけを考えて、それ以外の全てを捨てた結果だ。
そんな魔法の1つである水の弾丸―――――大海銃弾(アクエリアスガン
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ