何を捨ててでも掴んであげる
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り歳の離れた青年がいる事もあったし、少し上くらいの少女がいる時もあった。
いつだって無表情で、置かれた人形のようだった少女が荒げた声に、ルーはびくりと体を震わせる。
『死んだから親に会えるとでも思ったら大間違いよ!終わりは終わりなの、終わりって言うのはもう誰にも会えないって事でしょうが!全て終わるって解ってるのに、“親に会う”って続きを求めるなんて矛盾してるわ!いい加減冷静になって、自分の間違いを正しなさい!』
それは母親が子供に説教しているような光景だった。
恐る恐る振り返ると、ギルドでは声を掛けても何の反応もしてくれなかった青い髪の少女がこちらを睨むように見つめている。青い目が、真っ直ぐに見ている。
確かルーより2つ年下であるはずだから―――7歳の少女。ルー以上に幼いはずの少女の目は、誰よりも大人に見えた。
『確かに私にはアンタの気持ちなんて欠片も解らないし、解ろうとだって思わない!だけど、失ってるのがアンタだけな訳ないじゃない!私の周りが溢れているのは、失った部分を埋めた結果なの!そうやってすぐに、何でも諦めるような奴の周りが埋められてるほど世の中甘くなんてないわ!』
今にもルーの胸倉を掴みそうな勢いで。
1回も喋った事も目を合わせた事もない少女は、言った。
『足掻いてみせなさいよ!本当に辛くて苦しいなら、全身全霊で足掻きなさい!乗り越えられないから逃げるだなんて誰にでも出来る事をしてる暇があったら、自分にしか出来ない事で生きなさい!』
視界が霞み、歪み始めた。泣いている事に気づいたのはもう少し後の事。
気高く強い、後にギルド最強の女問題児とまで呼ばれるようになる少女は、マグノリア全体に言い聞かせるような大きな声で叫んだ。
『それでも本当に辛くて苦しいなら、手を伸ばしなさい!その手は必ず―――――――』
「―――――――私が、何を捨ててでも掴んであげる」
静寂の中で、あの時の少女は呟いた。伸びた背、揺れる青い髪。月日を重ねても、彼女の根本は何も変わっていない。
その気高さも、何も怖れない勇ましさも。傷つく事を恐怖とせず、何もしない事に怯える心も。
かつてルーを救った少女を構成する全ては、何も変わらない。
「そう言ったでしょ、私が」
「……うん」
「忘れたとは言わせないわよ。約束嫌いの私が、恐らく初めて持ち出した事なんだから」
「……忘れる訳、ないよ」
現れた少女の華奢な背中を見た瞬間、足の力が抜けていた。心から信頼して、安心出来る姿が目に飛び込んできた瞬間、気づいたら座り込んでいた。
最初は目を見開いていたナツ達も、表情を和らげる。
「だって君が、いつだって僕の手を拒まずに掴んでくれたから」
揺れる青髪、華
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