何を捨ててでも掴んであげる
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り、エルザがありったけの力で起き上がろうとして。
アルカの口が僅かに動いているのは、自分が出来るだけの盾を張るつもりなのだろう。その耐久力はルーの物に比べると鉄と段ボールくらいの違いがあるが、ないよりはマシだ。左腕にはハッピーを抱き、ハッピーだけでも吹き飛ばされないように対策している。
誰よりも前に立つ背中を後ろから、何も出来ずに見るのは2度目で、ルーシィは手探りで鍵を探しつつ目を見開いた。
「…無駄な事を」
その意志を根本から砕くように、シャロンが呟く。
金色の光を纏う両手の前に、紺色の魔法陣が展開した。
「星竜の剣牙」
―――――そして。
魔法陣から、鋭い牙のような光が、散弾のように放たれた。
当然のように、ルーの詠唱が終わるのを待たずに。
「ルー!」
「逃げろっ!」
ルーシィとアルカの声が響く。冷気を溢れさせるグレイと換装途中のエルザが駆けるが、間に合わない。
それでもルーは1歩も引かずに、大きく両腕を広げてぎゅっと目を閉じた。
「大海怒号!」
轟!と。
空気を大きく震わせて、勢いよく水が放たれる。それはシャロンの光をいとも簡単に呑み込み、その全てを砕いた。
「!」
その声は軽やかなソプラノで、聞こえた魔法名は彼女が得意とする、威力任せの一撃で。その魔法は、世界中探したって彼女しか使えない攻撃する事だけを考えて生み出された魔法で。
ハッとして目を開いたルーの視界で、ふわりと青が揺れた。
『嫌だよ!皆死んじゃったんだ!父さんも母さんもサヤも……!』
蘇るのは、幼い頃の記憶。
アマリリス村に1人取り残されて、ようやく出会った魔導士について行く形でマグノリアまで来て、ギルドに加入して、周りに全てを悟られないように、笑って。
簡単に言ってしまえば、無理をしていた。本当はもっと泣いて、声が枯れるくらいまで泣き叫ぶだろうに、彼はそれをする前に新しい人々に出会ったから。そんな彼等に泣いている所を見られなくなくて、ずっと堪えていて―――――それが、爆発した結果。
『だからってそれが死ぬ理由にはならないでしょうが!頭冷やしなさいよ!』
『君には解んないよ!何にも失くした事がない君には!いつだって周りが溢れてる君には、僕の気持ちなんてこれっぽっちも解る訳ないんだ!』
『……いつまで悲劇のヒロイン風に演じてれば気が済むのよアンタは!』
マグノリアにある岩山の上から飛び降りようとした。それで、全てを終わらせたかった。
1歩1歩足を進めていったルーの腕を掴み止めようとする少女の声に、無意識のうちにルーは叫ぶ。ギルドで初めて見た時から、彼女の周りには誰かがいた。弟や兄、かな
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