何を捨ててでも掴んであげる
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しら」
興味なさそうに呟くシャロンの顔に、狂ったような笑みはない。先ほどまでの、顔ごと凍らせてしまったようなどこまでも冷たく厳しい表情があるだけだった。
「お前も…巫女、なのか……」
「ええ、そうよ。でもあんな出来損ないと同等に扱わないで頂戴。不完全なあの小娘には出来ない事が私には出来る。格の違いね」
エルザの言葉に吐き捨てるように答えたシャロンは、更に両手に魔力を集中させる。
力を込め起き上がろうとする彼等を見下すように眺めたシャロンは、ふぅ、と短く息を吐いた。その両手が、静かにナツ達の方を向く。
「……させるかあああああああっ!」
ルーが駆け出したのは、それと同時だった。
どこにそんな力があったのかと尋ねたくなるような勢いで駆けたルーは、誰よりも前に立って左手に魔力を込める。
盾を張るつもりなのだろう。ルーの盾さえあれば、きっとどんな一撃だって防げる―――――けれど。
「っ…ルー、下がれ!今からじゃ詠唱が間に合わないっ!そしたらお前が……!」
アルカが、空気を裂くような悲痛な声で叫ぶ。それは、同じ元素魔法を使うが故に解った事だった。
今から詠唱を始めるルーと、今から攻撃をするシャロン。速いのは当然、詠唱はいらず既に攻撃態勢にあるシャロンだ。今からでは、ルーの盾は間に合わない。
「解ってるよ!そんなの、バカな僕だってちゃんと解ってる!」
そう――――そんなの、術者であるルーが1番よく解っている。今からじゃどんなに足掻いたって間に合わない。声が枯れるほどに叫んだって詠唱が完了する訳でもない。
けれどそれがルーが下がる理由になんて、どうやったってならない。
「けどっ!皆を守るのが僕の仕事で、僕が唯一出来る事なんだ!」
攻撃は苦手で、いつも後ろからの補助と少しの遠距離攻撃しか出来なかった。竜人であるティアと悪魔であるアルカに比べると、至って普通の人間なのがルーだった。
いつだって前へと駆け出す2人が、ルーには羨ましかった。自分の力じゃ何も出来ず、守る対象がいなければ何も出来ないルーにとって、誰がいてもいなくても力を振るえる2人は凄く自由に見えていた。
「だったらさ!僕にしか、出来ない事ならさっ」
今ここで誰よりも力を振るえるのはルーだ。きっとグレイが氷の盾を造る方が早いだろうけど、エルザが金剛の鎧に換装する方が早いだろうけど、そんなのはどうでもいい。
最高速度で詠唱して、本当に僅かな可能性に全てをかけて、それでも間に合わないのならば、自分が盾になる。それだけの話だ。
「最後まで、やってやろうって思うんだよ!」
全員に背を向け、失敗しないように慎重に、それでも素早く詠唱する。
後ろにいるナツが咄嗟に手を伸ばし、グレイが造形魔法の構えを取
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