暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
何を捨ててでも掴んであげる
[5/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
もう1度サンドバスターを放てば、それを解っていたのか詠唱を終えていたルーが再び風の流れを操って、シャロンだけをピンポイントに狙う。

「グレイ!アルカ!」

後方に跳んだエルザの声で、グレイとアルカも攻撃の手を止め後ろへと跳ぶ。怪訝そうな表情を浮かべるシャロンは、肌を撫でる熱気に気づき顔を前に向けた。
木の枝を離したハッピーに掴まれたナツの両手に、炎が纏われる。

「火竜の!」

叫び、ハッピーがそれを合図にナツを落とす。勢いを殺さずそのまま生かしたナツは、合わせた両手を叩きつけた。

「煌炎!」

地面を揺らすほどの衝撃が、辺りに伝わった。









間違った事をしたとは思わない。むしろ今までが間違っていて、初めて正しい事をしたと思う。
壁に背中を預け座る彼は、息を切らしつつ力なく微笑む。

(あの男があれを置いていってくれたおかげで何とか間に合ったか…)

チャラリ、と小さな音を立てるのは鍵。銀色の鍵に隠れるように重なる黒い鍵と、古びて錆びたような色合いにくすんだ赤で古代文字が綴られた鍵を、彼は左手で握りしめる。
右手が抱えるのは白い布。紺色のラインが入ったそれのポケットに3つの鍵を押し込むように入れた彼は、目を向ける事なく呟いた。

「そこにいるんだろう。聞いているのなら、これをあの男に届けておいてくれ」

そう言って。
彼は、目を伏せ苦笑した。

「俺が出ていけば、いろいろ混乱するだろうからな。顔とか、アイツの事とか」










「なかなかね。ここまで追い詰められたのは初めてかしら」

そんな声に、ナツ達は目を見開いた。
立ち上る砂煙の中で、立ち上がるシャロンのシルエットが見える。白髪混じりの青い髪が見え、厳しく冷たい表情が砂煙の中から覗いた。

「まあ…私は本気どころか、魔法の1つすら使っていないのだけれど」

シャロンはほぼ無傷だった。
纏っていたローブは裾がボロボロになっているし、多少の傷は負っているけれど、それは無傷という言葉が1番近いであろう状態で。
一斉にあれ程の攻撃を仕掛けたナツ達は、言葉を失った。

「一族の為にも負ける訳にはいかないのよ、私は。だから―――――見せてあげましょう」

両腕を広げる。その顔に、初めて笑みが浮かぶ。
狂ったような、何かに取り憑かれたような笑み。ティアがシャロンを恐れる理由をまざまざと思い知らされる笑みが広がっていた。

「尊き血、気高き一族、我等が初祖…星竜シュテルロギアよ、我が声を耳に!」

空気の流れが変わった。大気が揺れ、何かが姿を現そうとしている。
全身をビリビリと撫でるその空気と雰囲気に動けないナツ達を嘲るように見つめたシャロンは、声高に叫んだ。

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ