何を捨ててでも掴んであげる
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勝てるのなら、私がとっくに勝ってる。……今はまだいいけど、お祖母様は…)
ぎゅっと唇を噛みしめる。
昔から知るあの姿がどれほどの力を振るってきたか、ティアはよく知っていた。権力はもちろん、武力だって一族で1番と言われ、それに耐えきれず出ていった使用人だって少なくない。
ティアだって、シャロンの前に立つのは嫌いだった。本能が目の前にいる人間は危険だと告げているのに逃げられないのが、どうしても嫌で仕方なかった。
気高く人間との関わりを持たない事の多い竜の血を持つからか、ティアは人間が得意ではない。帽子を被っているのだって、極力目を合わせない為だ。その中でもやはり好き嫌いはあり、シャロンは何があっても、たとえ世界が滅んだって好きにはなれない人間である。
(だから、早く私が行かないと)
そう思っても、窓も扉もその思いには答えてくれない。
窓にはヒビ1つ入らないし扉には鍵がかかっていて壊れないし、床をぶち抜いてやろうかとも考えたが結構堅く、天井をぶち抜けば瓦礫が落ちてきて危ないし。
「ああもう!何なのこの対私用の部屋はっ!」
八つ当たりしたい気分を必死に抑える。今はどこにも八つ当たり出来そうにない。
この後の苛々をこの後どこにぶつけようかと考えながら再び窓と向き合ったティアは―――――即座に振り返った。
それと同時に、ガチャリとドアノブが回る。
「!アンタ……」
そこに立つ姿を見て、ティアは目を見開いた。
「いっくよー!空をも斬り裂く鋭く激しき風の刃を!悠久なる空を駆ける天馬の如き疾風の俊足を!大空剛腕×大空俊足!」
ルーの両手から緑色の光が溢れた。風に乗って流れたそれはナツ達の全身を包み、能力を上昇させる。
補助魔法がかかると同時に駆け出したのは、ナツだった。
「火竜の……鉄拳!」
炎を纏った右拳を、躊躇いなく振りかざす。
それを鋭い目で追っていたシャロンは咄嗟に後ろに跳び、ナツの拳を回避した。更に続くナツの打撃攻撃を物ともせず、どこからか取り出した短剣を流れるように振るう。
「ぐっ」
「この程度?」
斬りつけられた左腕を咄嗟に抑えたナツを、シャロンが冷たい目で見つめる。ティアとは違う、本当に氷を埋め込んだような冷たさを放つ目をナツは睨みつけた。
続けて攻撃を加えようとしたシャロンだったが、ふわりと頬を撫でた風の動きに気づき、目線を上げる。
視界に飛び込んだのは、揺れる緋色と深紅。
「飛翔・音速の爪!」
「“我ガ手ヨリ放タレシ紅、熱ヲ纏イシ流星ノ一撃ヲ!”…紅蓮流星!大火弓矢!」
飛翔の鎧と大空俊足によって上昇した速度を利用し
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