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ZIGZAGセブンティーン
第五章

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第五章

「地元の店に入ることになるな」
「そう。頑張ってね」
「そっちはどうなんだよ」
 俺は俺で問い返した。
「就職か?それとも進学か?」
「私は喫茶店にね」
「そこに入るのかよ」
「そう、喫茶店っていっても和菓子系のね」
 つまり甘味処ってわけだ。そこだというのだ。
「そこで修業するから。お金も稼ぎながら」
「将来の為かよ」
「家、うどん屋だからね」
 そうした意味じゃ俺と同じだった。やっぱり同じ商店街で育っただけはあった。
「家は一番上のお兄ちゃんが継ぐけれど」
「御前も暖簾分けか?」
「そんなつもりはないけれどね」
「そうか」
「そうよ。そうね、お互い就職するのね」
「そうだな。高校を卒業したらな」
「じゃあ」
 その話をしてからだ。俺にこんなことを言ってきた。
「部屋、借りる?」
「部屋!?」
「そう、アパート」
 ぶしつけにこんな話をはじめてきた。
「アパートにはいる?それじゃあ」
「何でそんな話になるんだよ」
「だって。私達付き合ってるから」
「だからだってのかよ」
「そうよ。だからね」
「一緒にか」
「嫌?」
 少し真剣な顔で尋ねてきた。
「それって」
「嫌じゃないさ。けれど急に言われたからな」
「それでなの」
「そうだよ。すぐに答えるには心の準備が必要だろ」
「そういうのはすぐに言うものよ」
 いつも通り無茶なことを言いやがる。心の奥底から思った。
「だからね」
「すぐにかよ」
「そうよ。それでどうなの?」
 また俺に尋ねてきた。
「一緒に住む?どうする?」
「嫌って選択肢はないだろ」
 俺はこう言ってやった。
「そうだろ」
「そうよ。じゃあいいわね」
「ああ。高校を卒業したらな」
「一緒にね」
 俺ににこりと笑って話してきた。
「それじゃあね。二人一緒にね」
「暮らすか」
 そんな話をしてだった。俺達は十八になって高校を卒業した。それからすぐに一緒に暮らしだして結婚して今も一緒にいる。子供も何人かできた。俺達はもう十七じゃない。けれどその十七の時のことは今もはっきりと覚えている。今にして思えば楽しい時だった。


ZIGZAGセブンティーン   完


                   2010・12・7

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