例えばこんな機業残党の皆さんも意外と元気です
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る材質が何なのか分からなかったため、研究に研究を重ねてコアと同じ活動を再現できる物質を数年かけて作り出した。その過程で本物のコアを解体して怒られたりもしたが、完成品のエミュレータが出来てしまえば皆が自分を認めた。自分自身の発明より篠ノ之博士の模倣の方が喜ばれたのはちょっと悔しかったけど、それでも自分が必要とされていると感じる瞬間が心地よかった。
だから――そのコアに宿る意志まで自分がエミュレートできているとは思いもしなかったのだ。いや、ISに意志があるという前提を理解したうえで考えれば可能性はあった。ISの特徴である自己進化機能に必要な記憶領域に用意した管理プログラムがその人格とやらを形成することは不可能ではなかった。
ただ、知らなかったのだ。ISに人と同じ意思があるなんて。
知らなかったんだ。自分の作ったもので人殺しをしているなんて。
だって誰も今まで教えてくれなかったじゃないか。
じゃあ知りようがないじゃないか。
一を聞いて十を理解できても、聞くはずの一がないのでは理解のしようがないじゃないか。
僕は自分の作ったコアエミュレータに罪を自覚させられ、そして連行された。基地の外に出るのは記憶する初めての出来事だったけど、自分の家から無理やり引き剥がされるような気分だった。周りの大人たちは僕の事を白い目で見て糾弾した。自分が何をしたのか分かっているのか、とか、こんな子供が、とか、僕の意見や主張などお構いなしだった。
誰も聞いてくれなくて、誰も言うことも分からなくて泣きじゃくって――そんな時に、あの人が現れた。
きれいな女の人だった。周りの大人たちに何やら言って下がらせた女の人は、涙を拭って顔を上げた僕の手を取って立ち上がらせ、その頭を抱いた。身長が違い過ぎて顔は女の人のお腹にあたった。その手がとても暖かくて、やわらかかった。
「君は、昔の私に似ているのかもしれない。だから、私と一緒に機械以外の勉強しない?」
「――貴方の、名前は?」
「束。篠ノ之束だよ」
篠ノ之束――この人が。
あの研究室と基地だけで完結した世界の中で、唯一知っている人の名前だった。基地の皆はあんまり好きじゃなかったみたいだから言わなかったけど、僕より天才がいるんならこの人じゃないかと密かに思ってた。きっときれいで、そしてすごく頭のいい人なんだろうという憧れも抱いたことがある、そんな人だ。
「君のママは悪い事をして捕まっちゃったみたい。基地にいた人たちも悪い事をしてた。勿論自覚はなかっただろうけど、君もね」
「ぼ、僕は・・・僕は知らなかったんだもん!」
この人も僕を責めるのかと思ったけど、篠ノ之束は責めなかった。
「そうだね。そんなこと知らなかった、こうなるとは思わなかった・・・・・・誰しも一度はそんな
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