第二十五話 幻と現実その十
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「だからね」
「八条鉄道ってこうした時便利だよな」
薊はしみじみとして言った。
「本当にな」
「ええ、一つの鉄道で行けることはね」
菫は薊ににこりと笑って言った。
「乗り換えがあってもね」
「便利だよな」
「日本全土を走っている鉄道は八条鉄道だけよ」
かつては国鉄もそうだったがJRになったので今はそうではない。しかし八条鉄道は今も尚、なのである。
「だからね」
「移動も楽だよな」
「まずここから大阪に行って」
それからだった。
「和歌山から三重、それで滋賀から京都、奈良に行ってね」
「また大阪に戻ってか」
「そうして移動出来るわよ」
「そう思うと楽だな」
「運賃の方もね」
旅行の際に最も重要になるそのこともだった。
「八条鉄道のサービスで安く済むから」
「そっちの方も安心していけるか」
「ええ、それじゃあ決まりかしら」
「だよな、旅行に行くのならな」
それならとだ、薊は菫の話に納得した。それは他の面々も同じだった。そうして別れてだった。菫は菖蒲と共にだ。
電車に乗ろうとした、一緒に乗ったのは二人の帰る方向が一緒だったからだ、だがその電車八条鉄道の青いそれに乗ったところで。
走りはじめてからだ、菖蒲は自分の隣に座る菫に正面を向いたまま言った。
「来たわね」
「そうね」
菫も正面を向いたまま菖蒲に答えた。
「上ね」
「幸い今この車両には誰もいないわ」
二人以外には、というのだ。
「だからね」
「今のうちに列車の外に出て」
「戦いに入りましょう」
「列車の上での戦いね」
「菫ちゃんもはじめてよね」
「菖蒲ちゃんもよね」
「ええ、やるとしたらね」
その時はとだ、菖蒲は菫にいつものクールな顔で答えた。
「はじめてになるわ」
「そうよね、けれど」
「逃げる訳にはいかないわ」
やはりクールに言う菖蒲だった。
「どちらにしても来るから」
「そうなのよね、じゃあね」
「今から上に出て」
「戦いましょう」
「そういうことね」
二人で言ってだ、念の為に周りに誰もいないことを確認して。
そのうえで二人が並んで座っている席の後ろの窓を開けてだ、そこからだった。
二人は自分達がいる車両の上に飛んで出た、窓の間を巧みに通って。
そうして車両の上に出るとだ、そこに怪人がいた。
怪人はクラゲと人の間の子だった、白く半ば透き通ったクラゲの頭と人間の両手、そして無数の触手があった。菖蒲は自分達の頭上の電線を見て言った。
「電気があるからね」
「察しがいいな」
「ええ、わかるわ」
そのことはとだ、菖蒲は即座に怪人に答えた。
「クラゲは実際には電気は出さないけれど」
「俺はカツオノエボシの怪人だ」
「クラゲの中でも特に毒の強い」
「そうだ、
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