第二十五話 幻と現実その八
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「石とか投げたら怒るけれどさ」
「そうですか」
「そうなんだよ、けれど広島っていうとさ」
またこの県について話す薊だった。
「江田島って聞いてもカープだったよ」
「宇野ちゃんもいつもカープカープ言うからね」
裕香はまた彼女の名前を出した。
「本当に」
「勝ったら時にな」
「薊ちゃんが横浜のこと言うよりもよね」
「ずっと言うよな」
「本当にね」
「けれど広島に行くことが多いんなら」
それならとだ、こうも言う薊だった。
「牡蠣食いたいな」
「牡蠣の他にもよね」
「お好み焼きもさ」
それもだというのだ。
「食いたいな」
「広島のお好み焼きね」
裕香も薊に応える。
「あれね」
「こっちじゃ広島焼きって言うよな」
「関西のお好み焼きは一つよ」
まさにだ、たった一つである。
「大阪よ」
「だよな、やっぱり」
「他はないわよ」
絶対に、というのだ。
「あれは広島焼きよ」
「そここだわりだよな」
「別に広島焼きは嫌われていないけれど」
それでもだというのだ。
「お好み焼きじゃないのよ」
「嫌いじゃなくてもか」
「お好み焼きじゃないのよ、ただね」
「それ広島だと違うよな」
「広島だと大阪焼きっていうのよ」
大阪のお好み焼きがそう呼ばれるというのだ、広島は広島でこのこだわりを見せて一歩も引かないのである。
「それ宇野ちゃんもね」
「言うんだな」
「そここだわりがあってね」
広島出身の彼女もというのだ。
「カープのことと同じだけ強く言うから」
「カープなあ」
「春先と後半に強いね」
「若手厳しく鍛えてるからな、あそこ」
「一からね」
ここが戦後日本の忌むべき病の象徴巨人と違うところだ、巨人の如き球団が持て囃される戦後日本のモラルの低さは嘆くべきである。
「それこそ」
「だから後半にも強いのよ」
「そうだよな、それにしてもな」
「広島よね」
「本当に行ってみたいな」
心からこう言った薊だった。
「大阪も行ったしな」
「奈良とか京都は」
「ああ、古都か」
「そっちも行ってみる?」
「いいな、じゃあ夏休みにでも」
「行こうね。薊ちゃん夏も寮よね」
「別に孤児院に戻ってもいいけれどさ」
薊にとって実家はそこなのだ、だからこう言ったのである。
「奈良だけじゃなくて三重、滋賀、和歌山って」
「関西全域ね」
「行ってみたいな」
「じゃあ行ってみる?」
早速とだ、裕香は薊に笑顔で提案した。
「私一応奈良県民だし」
「一応かよ」
「だって。南だから」
奈良県のである。
「平家の隠れ里って言われた位の」
「だからかよ」
「北なんて都会よ」
奈良県民の間ではこう思われている、それだけ北と南に差が激しいのが奈良県なのだ
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