第6章 流されて異界
第102話 ユニーク
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は考えられない素早い、そして苛烈とも言うべき動きに驚きの波動を発して居る。
しかし、その喧騒。陶器が割れる音や、その他の物音がすべて何処か遠くの世界の物音に感じる俺。分かり易く説明するのなら、プールに潜った状態で聞こえて来る音のように周囲で発生している音を感じる。
そして、何故か――。俺本人としては真っ直ぐに立って居る心算なのですが、何故か視界が斜めに傾いで行き――
歪んだ視界が、かなり古くなった石膏ボード製の天井を映した瞬間――
空を掴もうとして居た右手を捉える何か。それは、仰向けに倒れようとする俺をしっかりと引き寄せ――
そして……。
そうして、完全に意識を失う一瞬前に感じたのは、とても懐かしい彼女の香りで有った。
☆★☆★☆
ふいに誰かに名前を呼ばれたような気がする。
一瞬。そう、ほんの一瞬だけ、自分の置かれた場所及び状況に戸惑う俺。確か俺は、朝倉涼子の淹れた……作り出した妙な健康茶を口にして、そのまま倒れたのでは……。
ここは……。
酷く冷たく、そして、暗い世界。おそらく、今は夜。
何もかもが止まったかのような空間。上空から降りしきる雨粒さえ、超高速度撮影のカメラに因る映像をスローモーションで再生して居るかのような雰囲気。生ある物も、生なき物もゆっくりとしか動く事の出来ない世界。
そう、大気自体も粘性を帯びた液体の如く身体の動きを阻害し、音さえも自らに届くまでに数瞬の時間を要する、何もかもが遅滞した世界。
仙術で時間を操り、通常の世界から自らのみを切り離した状態に今の俺は存在する。
そう確認を行った俺。
その瞬間、腹部に焼けた鉄の棒を押し付けられたような激痛。そして、巨大な黒い物体に捕らえられ、後方に吹き飛ばされる俺。
しかし――
しかし、今回の戦いも辛うじて俺たちの勝ちだ。
巨大な顎門に捕らえられ、後方に物凄い勢いで運ばれながらも、そう確信する俺。
身体の各部の機能はかなり低下しているのが判る。現在注入されて居る百足の毒。更に、最初の段階で彼女を逃がす為に受けた毒液が一瞬毎に俺の生命力を削って居るのは間違いない。
但し、自らの時間を操り、一撃で死に至る致命的な部分に牙を立てられる事を紙一重で防いだ俺には、既に敗北の二文字はない!
其処だけは普段通りに動く頭だけでそう考え、右手を一閃。後方に物凄い勢いで運ばれながらも、いや、ヤツに因って運ばれているが故に彼我の距離及びベクトルはゼロ。俺の腹部に牙を突き立てて居ると言う事は、ここなら絶対に外す事のない位置と言う事でもある。
俺の龍気の高まりを受け、蒼き光輝を纏いし斬撃が優美な弧を描いて一閃。
硬いキチン質の外骨格を斬り裂いた瞬間、噴
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