第6章 流されて異界
第102話 ユニーク
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し……。
彼女。朝倉涼子の勧めて来る液体――真っ直ぐに天井に向かって白い湯気を立ち昇らせるかなり特徴的な液体をマジマジと見つめる俺。そして、その紫色の液体から感じる微かな既視感。その不吉な記憶に身体中の体毛と言う体毛が総毛立ち、背筋には戦慄と言う名前の冷たい物が走ったような気がする。
いや、あの時には鼻にツンと来るような、かなり強い刺激的な香りが付随して居た分だけ、今の俺の手の中に有る液体の方が破壊力は少ないかも知れない。
心に刻まれた精神的外傷と言う名前の古傷がうずき出すのを防ぐ為、出来るだけ前回の経験との差異を考えようとする俺。
もっとも、割と厚めの陶器の湯呑を通じて伝わって来る感覚。人肌……と言うには少し熱過ぎるその温度と相殺すると、どちらの方がより破壊力があると断言出来ないのですが……。
何故ならば、この温度では鼻を摘まんで一気にノドへと流し込む、などと言う荒業は出来そうも有りませんから。
「良いわね、その健康茶。とても良いわよ、涼子」
どうせ、さっきの質問の答えは貰ったような物だし。
聞こえるか聞こえないかの微妙な大きさ。いや、普通の人間には絶対に聞こえないレベルの声でそう続けるハルヒ。但し、心の中だけで呟けば良い内容をわざわざ……ほぼ、口を動かしただけのレベルでも、わざわざ口に出してそう言った事に彼女の決意のような物を感じた。
もっとも、他人の不幸は蜜の味。彼女、ハルヒがどんな決意を行ったのか判りませんが、彼女が俺たちに聞こえるように口にした内容は、この言葉が真実であると言う色彩を帯びて居たのですが。
どちらにしても……。本当にどちらにしても、これは非常にマズイ状態。
【この不気味な液体は、本当に身体に害はないのか?】
短い思考の元、そう判断した俺が確認の為に長門さんにそう問い掛けた。確かに朝倉涼子に表面上の敵意はないとは思います。……が、しかし、それは飽くまでも表面上の事。もしかすると心のずっと奥の方。彼女自身にも自覚出来ないレベルの奥底には、俺たち地球産の神々に連なる末裔たちに対する――
かなり追い詰められた者の思考でそう考え続ける俺。もっとも、これは多分、俺の考え過ぎなのだとは思うのですが……。
【問題ない】
しかし……。いや、予想通りの短い答えを返して来る長門さん。更にその答えは割りと明るいトーンの物。何となく、なのですが、俺が彼女に意見を求めた事が彼女の機嫌を多少良くしたような気がする。
そうして、
【以前、ここに居る全員がその液体を口にした時には、何も不都合な事は起きなかった】
最初の短い答えだけではあまりにも説明不足だと考えたのか、彼女がこの小刻みに震える……俺の手の震えを受けて水面に波紋を広げている紫色の液
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