第6章 流されて異界
第102話 ユニーク
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「だったら、その場所に居たらしい有希はどうなのよ。もし、その場に居たのがあんたと有希だけだった場合、あんたはどうしたの?」
相馬さつき。そして長門有希と移して来た視線。最後は俺にその強い瞳を固定してそう問い掛けて来るハルヒ。
正直に言うと、不機嫌だと思う陰の気を発して居るとは思うのですが、その中に微妙な雰囲気……何か『願い』のような物を内包している、非常に複雑な雰囲気を放って居る。
そうして……。
………………。
…………。
ゆっくりと過ぎて行く時間。少しぎこちない……。俺本人としては自然な雰囲気で首を回らせ長門さんを見つめた心算なのですが、どう考えても出来の悪い操り人形の如き動きで首を動かしたのが丸分かりの状態で彼女を見つめる俺。
当然。いや、それまではずっと、自らの手の中に開いた和漢で綴られた書籍にその視線を固定して居たはずの彼女の視線とその瞬間交わった。
何時にも増して深い憂いを湛えているかのような瞳に――
もし……。
もし、この目の前に居る少女がハルケギニア世界の湖の乙女ならば、間違いなく彼女に後の事を任せて一度、その場から姿を消すでしょう。しかし、彼女……長門有希は湖の乙女では有りません。
但し、この判断は今この場に居る俺の判断。二月にこの世界を訪れた俺の異世界同位体はまた違った判断を下す可能性も有るでしょう。まして、この問いの答えを返して良いのは俺ではなく、異世界同位体の俺の方なので……。
返事に窮し、再び机の上に置かれた湯呑に手を伸ばす俺。
しかし、
「あ、お茶なら今から淹れますね」
其処には、先ほど中身をすべて飲み干した湯呑がひとつ存在するだけ。当然、その中にはお茶が残って居るはずなどなく……。
この妙に緊迫した状況の中で、ようやく自分の仕事を見つける事の出来たメイド姿の先輩が俺の目の前を横切り、妙に軽快な雰囲気で机の上にある湯呑へと手を伸ばそうとして――
しかし、俺を睨み付けている少女の視線に入った途端、何故か回れ右をしてすごすごと扉の前まで退避して仕舞った。
……う〜む、矢張り、ピンチは自分で切り抜けるしかないか。
そう考え、俺はもう一度、答えに窮する問いを投げ掛けて来た快活な少女を見つめる。
腕を胸の前で組み、俺の答えを待つ者の姿勢。但し、小刻みにリズムを刻む右手人差し指が、あまり待たせると何を始めるか判らない爆発前の活火山状態を予想させる。
成るほど。どうにも待つ事に慣れていない、少しイラチ……。せっかちで気の短い人間の特徴を表面に出し、隠そうとしていないハルヒ。まぁ、確かに頭の良い人間は一足飛びに答えを出して仕舞いますから、他人。特に頭の巡りの悪い人間が何故、彼、彼女らから考えると簡単に導き出せる答
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