志乃「番外編って言っても別に大したことないけどね」
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がってきた。俺はやや上ずった声でそれの名前を口にした。
「ちょ、俺のDVD!」
「兄貴、これはないね」
志乃は見たくないとばかりにDVDを俺の胸辺りに押し付けてくる。それを受け取って、中身を確認する。そこにはちゃんと円盤型のそれが規定の位置に収まっていた。「はぁ……」と長い安堵の息を漏らした俺に、志乃はまるで汚物でも見るかのような目で尋ねた。
「兄貴、それ何回見たの」
「二一回」
「……一度死ねば?」
「何でそうなる!」
そこで、あれ?となる。何でこいつ俺のDVD持ってんだ?本来なら父さんの同僚の人が持ってる筈じゃないの?それについて聞くと、志乃は今度こそ完全に笑みを浮かべた。
ただし、その笑みはものすごく残忍で不敵なものだったが。
「聞きたい?」
「当たり前だろ。じらすな」
くくっと笑う志乃に『ホント楽しそうだなぁ』と思いつつ、自分も苦笑いしながら面白半分に聞いた。どうせ突拍子もない事を言うのは分かっている。そしてそれが事実であるという最大の悲劇が訪れるであろう事も承知している。
でも、普段無愛想なこいつが笑っているとそんな危険すらも何故か許せてしまいそうだった。
……しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
「私はね、前もって細工しておいたんだよ」
「?それどういう事?」
「変人鬼畜親父から事情を聞かされた後、私は自作でとある動画集を作った。それを適当なDVDパッケージに入れて、その時もう寝てた兄貴の部屋でそこのDVDとすり替えたの」
何だか話が変な方向に転がり出している気がする。だがここで口を挟むと流れが停滞してしまうので、何も言えなかった。志乃の口は無造作に動き続ける。
「それから数時間後、私が指定した時間通りにキチガイ親父が兄貴の部屋に侵入してDVDを回収した。つまり、私が作った奴ね。だから私が回収しておいた兄貴のDVDが今ここにあるってわけ」
そこで志乃は一息ついたので、俺は恐る恐る気になっていた質問をしてみた。
「あのさ、志乃」
「何?」
「その自作したDVDの中身って、どういうやつ?」
「……聞きたい?」
「……うん。聞きたい」
「そう」
志乃はゆっくり俯いて、俺の視界から表情を隠した。前髪で奴の目が見えない。けれど確かな事がある。
それは、志乃が肩を震わせるまでに笑っているという事だ。
「……ル」
「え?何だって?」
「……BL、動画集……」
「…………………………」
「BL動画をたっぷり詰めたDVD」
「こ、こん、こ、こ……」
「どうしたの兄貴。キツネの真似?」
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