志乃「番外編って言っても別に大したことないけどね」
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昨日……俺は妹に殺されそうになった。言っておくが、冗談でも比喩表現でもない。現実に起きた出来事をそのまんま要約するとこうなるのだ。
とはいえ、その末端には俺の所為ということもあるので、お互い様でもある。ただ『風邪引いたら殺す』などという荒唐無稽な言葉を、冗談と受け取れるほどキャパシティが広い人間がいるかと問われれば、それはないと言ってやりたい。そうだ、俺は悪くない!大丈夫!……大丈夫。殺されそうになったけど、俺は今日も元気です。
*****
階段を降りてリビングに足を踏み入れる。すでにそこには妹の志乃と母さんがいた。二人とも朝食を取りながら無言でテレビの方に目を向けている。今は春休みだから志乃は休みで、母さんは主婦だから一日中家でコス作り。家事もこなすが、洗濯は俺か祖母任せという主婦としてどうなの状態だ。どうにかしてほしい。
俺の姿を見て、母さんが「あら、早いじゃない」と言ってくる。まるで俺がいつも遅くまで寝ているみたいな言い草だ。
「いやいや。いつも九時には起きてんじゃん」
「十分遅いわよ。私なんて毎日七時起きよ」
普通の主婦の人に比べちゃ、アンタも十分遅いだろ。父さんなんて朝五時起きなのに、家族の一人も起きて来てくれないんだぞ。あまりに可哀想じゃねぇかよ。いや、俺もそう言いつつ起きる気全く無いんだけどさ。
朝ご飯は、朝っぱらに父さんが作ってくれた味噌汁と白米だけ。隣に座っている志乃の納豆の臭いにげんなりするが、奴に気遣いという神経は存在しないのであえて無視。
今日は何しようか。一昨日と昨日はケンと綾乃と遊んだし、のんびりしようかな。どっちにしろ風邪気味なのは確かなんだから、カラオケには行けないし、どこか遊びに行く事も出来ない。しょうがない、やり残したまんまのRPGでもやるか……という感じで一日の潰し方を決定する。
目的を掴んだ俺は朝の工程を淡々とこなし終えて部屋に向かう。自室に着いて早速机の前にある椅子に座った。そして何の前触れもなく机の引き出しに手を添えて、ゆっくりと中を開ける。
実はここの奥には、俺が家族の誰にも話していない秘蔵のブツがあるのだ。というか、これをわざわざ他人に打ち明ける方がバカだと言わざるを得ない。男子諸君なら誰しもが一枚、あるいは一冊は持っているであろう、男の欲をさらにかき立てる魅惑のアイテム。
そう、エロビデオまたはエロ雑誌だ。俺は新世界への旅立ちとなる引き出しを開ける前に、フフッと一人笑う。
それはこの世に無くてはならない、どんな物にも置き換えられない唯一無二の存在。全世界の男性が心のどこかに必ず駐留させているであろう性欲を刺激する、神すら成せなかった人類の秘宝。ジャンルは様々だが『エロ』という観点から見れば全て平等だ。相違点があ
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