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横浜事変-the mixing black&white-
街の来訪者達はこの街の闇を嘲り、駆逐すべく動き出す
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情を顔に貼り付け、音も無く後ろを振り返った。

 そして、完全にエスカレーターに背を向けたとき、彼女の目は黒からグレーへと変化していた。いつの間にか右手の親指と人差し指の間には黒のカラーコンタクトが摘まれており、天然の白髪と色白な顔も相まって、日本人らしい点は綺麗さっぱり無くなっている。

 「私達の目的は、この街の闇を知ること。社長はそれを望んでいる。だからこそ、今は『彼ら』と手を結ばなくてはならない」

 「『あいつら』は信用なるのか?俺には、この街の裏事情に巻き込まれてるようにしか思えないんだが……」

 「組織の内乱程度、ロシアで暗殺部隊(スペツナズ)や軍の下請け部隊と戦った事に比べればお子様レベル。一笑に付す事すら時間の無駄よ」

 先刻の快活な人物と同一人物とは思えぬ言葉の堅苦しさ。ルースは「日本は平和だからな」と相槌を打ちつつ、警戒の色を含ませた言葉を紡いだ。

 「でも、油断はするなよ。いくら平和だとはいえ、この街が異常である事実に変わりはない」

 「分かってる」

日本での顔を完全に捨てた異国の殺し屋は、冷え切った瞳の奥に闘争の炎を揺らめかせながら、ルースにしか聞こえない声で宣言した。

 「殺し屋統括情報局……馬鹿げた名前だ。けど、社長が警戒するだけの何かがある。なら私達は知らなくてはならない」



 「ついでに殺してみるのも悪くないと思う」

 新たに横浜の街に投下された異分子達は、手中に収めた注射器で街の裏肌に毒入りの薬剤を突き付ける。それらは街を蠢く殺し屋という害虫を確実に痛め付け、やがて行動不能にしていく。

 その姿は、まるで飼い主に忠実な猟犬のようだった。
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