暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
人が脆くて弱い生き物であることをケンジは自分の手で証明した
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れば大した差ではない。問題は対象をいかに確実に殺せるかだけだ」
「お堅い人だねぇ、全く」
彼らはそんな他愛ない会話をしながら、後片付け班が到着するのを待つ。そこで狩屋は先程から言いたかった事を静かに口に出した。
「八幡さん、暁の奴、どう思います?」
「どう思う、とは?」
「あいつ、すげぇ真面目で、自分の信念貫いてるのは分かるんすよ。でも、その、なんつーか……」
なかなか言葉を選べずにいる狩屋とは目を合わせぬまま、八幡はクッと笑った。「え、どうしたんすか?」と聞いてくる金髪の少年に、八幡は室内の窓から見える横浜の街の一部に目をやりながら、ゆっくりと言葉を吐き出した。
「つまり、暁の歯車は普通とは違うっていうわけだ」
「はぐ……?」
「彼はちょっと変わっているだけだよ。……必死に取り組むべきものが、少しだけ普通のものと違う。それだけさ」
その言葉はどうしようもなく暁ケンジという少年の特異性を突いていて、それを口にした八幡も黙って聞いていた狩屋も、その後の言葉を紡ぐ事が出来なかった。
*****
――初めて人が死ぬところを見た。
狩屋に言われた通りパーカーを脱ぎ、コンビニで消臭用のスプレーを買った。そして軽くパーカーやズボンにスプレーを吹き付ける。少し湿った感触があるのは嫌だったが、我慢するしかない。
母親にはこれから帰宅する旨をメールで伝えた。理由はバイトという事にしてある。信じてもらえるか不安だったが、母親は「あまり遅くなったらダメよ」と注意した以外、何も言って来なかった。バイトの内容さえも。
――まぁ、聞かれてもコンビニって答えるけどね。
――なんか胸が熱い。さっきまで吐き気あったし。吐かなかっただけマシなのかな。
狩屋と八幡の手で無残に命を奪い取られていった哀れな詐欺師達。彼らは催涙スプレーで行動不能にさせられ、何の抵抗も出来ぬまま殺されてしまった。恐らく殺される理由すら理解出来ていなかった事だろう。
――僕も、一人……この手で……。
そう考えるだけで手や額に汗が滲んでくる。脳裏によぎるのは二人が仕留め忘れた一人の男。酷く酒臭く、無精髭を四方八方に生やした人物。情報によるとその男はこのグループのリーダー的存在だったようだ。
スプレーによって痛む目を押さえながらも、無理矢理こじ開けようとしている。それを確認した瞬間、反射的に右手が動いていた。自分の顔を見られるかもしれないという潜在的恐怖が、自分の意思とは関係無く引き金を引いてしまったのだ。
当然男は脳天に銃を撃ちこまれて即死した。威力の弱い拳銃のため、反動で肩が壊れる事は無かった。
だが即座に彼の頭に流れたのは『自分が人を殺した』という
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