暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
人が脆くて弱い生き物であることをケンジは自分の手で証明した
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の事を嘲っているようだ。時折奪い取った金の使い道の話をしているので、やはり彼らが偽装会社の構成員なのだろう。

 思わず八幡の顔を見ると、彼はすでに行動を開始していた。スリムな体躯を屈めながら、階段を一段ずつ上って行く。それに従って狩屋も続き、ケンジもそれに習った。まるでジェットコースターの番を待っているかのような緊迫感が腹底から湧き上がり、考え方が不謹慎だなと反省する。

 「……行くぞ」

 「りょーかい、汚名返上してやんぜ」

 「り、了解」

 何故なら、今から自分がやるのはジェットコースターとは真反対な血に染められた所業なのだから。

*****

 ケンジ達の仕事は呆気なく終了した。八幡の宣言通りよりも圧倒的に早く終わったのは、やはりプロの成せる(わざ)なのだろう。

 「この後チームBが後片付けに来る。私達は彼らが来るのをここで待ち、合流次第解散とする」

 「りょーかい。ああ、でも暁は時間ヤバいんじゃないすか?」

 「え?」

 突然自分の名前が出た事で、ケンジは狩屋の顔を見た。次いで携帯のホーム画面を見て時刻をチェック。針は午後7時50分を指している。まず彼が気付いたのは対象を殺す時間より待機していた時間の方が長いという事だった。

 「そうだな。暁、君はもう帰宅していい。初仕事で精神的にも疲れが溜まっているだろう」

 「え、あ、はい。じゃあその、失礼します」

 「おう。後は俺達に任せな。ああ、そのパーカーは脱いで、コンビニで消臭系のもの掛けた方がいいぜ。血生臭いと明らかに不審に思われるから。拳銃はその辺に置いといて構わねえよ、俺が管理していてやっから」

 「えっと、何から何まですみません。じゃあ、よろしくお願いします」

 狩屋からのアドバイスと気遣いに感謝の言葉を紡いでから、ケンジは悲惨な舞台と化した3階から降りて行った。そして後に残ったのは、互いにカジュアルな服装に身を包んだ殺し屋2人と、室内のあちこちに血液を飛び散らせた何人もの死体だけだった。

 偽装された旅行会社のオフィスは2人掛けの高そうなソファや社長用のデスク、周りは本棚やロッカー、旅行系のポスターや予定表で埋め尽くされた『いかにも』風な内容だった。きっとこれらも騙した金で贅沢に使ったのだろう。

 死体は全員男。ソファに纏まって酒を煽っていたのは八幡にとって何よりの好都合だった。その方が催涙スプレーで一度に仕留められるからだ。

 結果、八幡の望み通りに男達はスプレーの威力に悶え、その隙に殺し屋達の任務は取り留めなく行われた。男達は絶叫を上げる事さえ許されず順番に絶命していった。

 「あーあ、歯応えないわ。もうちょい粘ってくれた方が良くないすか、八幡さん」

 「別に私からす
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