暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
人が脆くて弱い生き物であることをケンジは自分の手で証明した
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るんだからな」
「はい」
「あの、八幡さん。僕があんなタイミングで言ったのもいけないんです。すみませんでした」
「暁は悪くないさ。まぁ、目的地に着くまでに仕事内容を聞くだけの時間があったのは否めないがな」
抑揚のない声でそう言ってから、彼は依頼内容について説明し始めた。
「今回の仕事対象は最近横浜以外でも見受けられる偽装運営会社だ。簡単に言えば詐欺。依頼者は、旅行会社にチケットを予約したにも関わらず1年経ってもチケットが届いてこなかった30代の夫婦だ」
「そうだったんですか。相手の数とかはすでに?」
「無論だ。対象は6人。全員ただの詐欺師だから殺すのは簡単だろう」
八幡はいつも以上に淡泊な口調で即答した。とはいえ怒っているわけではなく、これが彼の仕事に対する取組み方なのだろう。しかしただでさえクールな性格なのに感情や表情まで消し去ってしまうと、こちらまでも怖くなってしまうのも事実だった。
そんな事は億尾にも出さず、ケンジはサンドイッチを口に詰め込んで準備万端である事を示した。同じく狩屋も「名誉挽回と行きますか」と意気込んで八幡を見る。
ここまでの時間は約10分。八幡はやはり無表情で言葉を口にした。
「これより作戦開始。目標時間は……5分だ」
*****
対象がいるビルの裏口に到着し、ケンジ達は工作班が前もって回収していた合鍵を使ってビル内に侵入。本来なら通常の入口から侵入する予定だったために、裏口からでは進攻しにくいかと思われたが、八幡はまるで自分の家に上がるかのようにスラスラと道を行く。狩屋とケンジがそれに追随する形だ。
ケンジは前を走る二人の先輩の背中を追い掛けながら、両腰に装備された拳銃の重みをさらに実感した。
――拳銃ってやっぱり重い。あの人達、よくあんなに軽々と……。
ちなみにケンジが装備しているのは威力も低く、使い回しの良い小型自動拳銃だ。先日使った練習用拳銃は旧式だが、威力も精密さも今使っているものよりも少し格上げなので、今装備している拳銃はまさにケンジにとって使い勝手の良いものだと言える。
一方、八幡と狩屋が装備しているのは殺し屋統括情報局で支給されている回転式拳銃。もちろん自動拳銃の方が使い回しは良いが、手動である分シンプル且つ作動の信頼性が高い。また実弾が数年前まで普及していた物とは違う一新型なので、銃に慣れた殺し屋達に愛用されている。これらは全て狩屋から聞いた話だ。
ケンジは二人の後を追って階段を上っていたのだが、いつの間にか目的地近辺にまで来ていたらしく、八幡が二階と三階の間の踊り場で止まり、三階の様子を窺っている。周囲には三階にいる男達の笑い声が響く。話の内容を聞くに、詐欺に引っ掛かった人たち
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