暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
狩屋達彦は目の前の少年に得体の知れない感覚を掴み取った
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分の中で拳銃が畏怖する存在ではなくなった証拠か――

 ――きっと後者だね。

 狩屋は金髪をわしゃわしゃしながら確認を取った。

 「前に教えた撃ち方、覚えてっか?」

 「はい。覚えてます」

 「なら、あそこ狙って撃ってみな」

 そう言って狩屋が指さしたのは、夕陽の光が飛び出している窓に取り付けられた的。二人のいる場所からは5メートルほど離れており、的の中央が光の反射で視認しづらくなっていた。恐らく意図的に仕組まれたものだ、とケンジは心中で呟いた。

 「実戦では敵の姿を完全に捉えられない可能性が高い。今とほぼ同じだ。違うのは相手が動かないってことだけ。俺めっちゃ優しいわ〜」

 呑気な事を言いながら近くのドラム缶に座って、ケンジに鉛のように重たい言葉をぶつける。

 「さあ、暁ケンジ君は復讐を遂げるために次のステージに進めるのでしょうか?銃を撃てるのでしょうか?確実に、綺麗に、無情に決められるのでしょうかぁ?」

 挑発とも受け取れるその言葉にケンジは何も返さない。そのままじっと的を黙視していたが、やがて銃を持った腕を弧を描くように前に向けていった。銃口は真っ直ぐ的を向き、そのまま射撃体勢に入る筈だったのだが――


 「?おい、お前何してんだ?」

 狩屋が自身の金髪を手でわしゃわしゃと掻きながら、つまらなさそうに相手に問う。だが黒Tシャツの少年は彼の問いに答えなかった。彼は身体を半身にするような姿勢で右腕を突き出し、銃口を的に向けている。それだけ見れば玩具の銃を掲げてポーズを取っているようにしか見えない。しかしこの体勢では中心は愚か、的にすら当てられないだろう。発砲された反動で肩が上がるというのは誰もが知っている常識だ。

 「……シカトかよ。ま、細けぇことは気にしない主義だからいいけどさ。でも、これには絶対答えろ。暁、お前まさかそんなカッコつけた態勢から撃とう、だなんて考えちゃいないよな?」

 「……まさか、そんなわけあるはず――」

 その瞬間、建物内に乾いた音が一回だけ響いた。狩屋は自分と目を合わせずに会話していたケンジの後頭部に注目していて、何が起こったのか正確に処理しきれていなかった。唯一理解できた事と言えば、今の音がサプレンサーを装備した事で発砲音のボリュームを激減させた練習用の銃から生じたものだという事だった。

 そしてそれを改めて解釈した上で、狩屋は的の方に向かってのそりのそりと歩き出す。このときケンジがどんな顔をしていたのか、確認するだけの余裕はあまりなかった。

 ――窓が割れた音はしなかった。空発か?いや、弾はちゃんと充填してあった。……まさか。

 狩屋の脳裏に一つの可能性が浮かび上がる。だがそれは殺し屋として納得し(がた)いものだった。も
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