暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
局長は姿を見せぬまま街の裏を台頭する組織について語る
[6/7]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
何か聞きたい事は無いかね?』
「いえ、十分お話は聞けました。えと、ありがとうございました」
『まぁ最初は生で血を見るのも辛いだろうが、その辺は覚悟してくれ。八幡君、彼の事は君達チームAに任せてもいいかい?』
「了解。ありがとうございました」
それから二言三言話して八幡は通話を切った。局長によると定時報告は月に2回あり、欠席してもお咎めは無いそうだが『基本的に欠席や遅刻はあり得ない』という暗黙の了解が殺し屋間で置かれているらしい。毎回夜を抜け出す事は出来るだろうかと、ケンジは少し心配になった。
と、そこでちょうど心配の種からの電話が掛かってきた。ケンジは携帯のディスプレイに表示された『母さん』という文字を見て、露骨に嫌そうな顔をする。そんな彼を横目に、八幡はフッと笑いながら先に歩き出してしまった。
慌てて彼の後を追い掛けながらケンジは電話を取った。耳から盛大な怒りの声が飛び込んできて肩をビクリとさせる。
『ちょっと!いくら何でももう帰ってきなさい!今どこにいるの!?』
「えっと、山下埠頭」
『何でそんなところにいるのよ!今何時だか分かってる!?』
そう言われて携帯の画面で時間を確認する。時刻を見たケンジは顔を思いきり引き
攣
(
つ
)
らせた。
「じゅ、11時半……」
『早くしないと電車乗れないわよ?補導されても知らないから』
「そんな!」
『明日学校なんだから、早く帰ってきなさいよ。私寝るけど』
それを最後に母との通話が切れた。一方的に切られたのだ。茫然と携帯画面を見続けるケンジを見て、八幡は愉快そうに呟いた。
「ちゃんと定時報告に顔を出せるか、これからの態度に関わって来るね」
「はい、そうみたいです……」
少しでも生活を改めるよう努力しよう。ケンジは赤レンガを横目に見ながら、いつものように溜息を吐いた。
「ああそうだ。暁君、明日は空いているかな?」
「明日ですか?はい、僕は帰宅部ですし、空いてます」
「それは良かった。なら明日から始められるね」
「?何を、ですか?」
純粋に話の展開に追い着けなかったので、八幡に疑問をぶつけた。すると彼は長い黒髪を棚引かせながら、こう言った。
「特訓だよ。人を殺すためのさ」
*****
自分がなんと答えていたのかはよく思い出せない。だが気付けばケンジは自宅の部屋で布団を被っていた。時間は母親からの電話以来一度も見ていないが、深く眠れたところですぐに起床時刻を迎えるだろう。
――彼らは、そして僕も曖昧だ。
ずっと喉元に引っ掛かっていた言葉。それを心中で呟く。その考えがケンジには的を射ているようにしか思えなかった。
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ