暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
局長は姿を見せぬまま街の裏を台頭する組織について語る
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時に新港埠頭だ」

 「狩屋、アンタいい加減ちゃんと覚えたら?頭の中に何を詰めてるのかしら」

 「姐さん、それちょっとキツいわ……」

 宮条の軽い罵りに狩屋がふざけた調子で落ち込む。それだけ見れば学校の先輩後輩みたいな風に見えるが、彼らがれっきとした殺し屋である事を忘れてはならない。

 そのまま彼らのやり取りを遠い目で眺めていたのだが、いつの間にか隣に来ていた八幡に声をかけられた事で我に返った。

 「暁君は定時報告に出席できるかな。出来れば局長から聞いた方が良いかと思って説明を中断したのだが」

 「ああ、それなら多分大丈夫です。親は基本放任主義なので」

 「それにしては律儀だね。放任主義と言っても、ちゃんと面倒を見てくれていたようじゃないか。素晴らしい親御さんだ」

 「いえ、そんな」

 「けれど、君の常人とは違う切れ味を持ったところには気付けなかったようだがね」

 彼の最大限の皮肉を込めたその言葉に、ケンジは何も言う事が出来なかった。

*****

午後9時 新港埠頭 新港客船ターミナル付近

 新港埠頭。それは1944年に完成した日本初の本格的な繋船岸壁を持つ巨大な埠頭だ。岸壁には同時に13隻の船舶が接岸し、はしけによらない荷役を可能とした、近代的な造りとなっており、現在でも使われている。数年前に横浜港開港の節目として行われた博覧会では会場の一つとして利用され、多くの観光客の足を向かせていた。

 また、みなとみらい再開発により赤レンガ倉庫やワールドポーターズなどの商業施設を始め、横浜海上防衛基地などの湾岸関連の施設、カップヌードルスタジアムや運河パークといった振興地が整備され、市外からの観光客も多い地域として生まれ変わった。

 そうした観光地は一つの通りの左右に立ち並んでおり、観光客にも分かりやすい仕様になっているのだが、ケンジ達がいる場所はそうした表舞台とは違った。

 何故なら今彼らがいるのは、まさに客船が出港していたターミナル駅のど真ん中だったからだ。近くにはかつて使われていたハンマーヘッドクレーンが佇み、夜の横浜湾に無骨なシルエットを映し出していた。勿論周囲に人はいない。

 ここは数年前まではターミナル駅として利用されていたそうだが、ターミナルや岸壁の老朽化、別のターミナル駅の普及などの観点からタグボートの係留地としか使われていないらしい。とはいえ整備計画が無いわけではないらしく、ハンマーヘッドクレーンを象徴にした公園なども考えられているそうだ。

 というより、本来ここは立ち入り禁止区域なのではないか。ケンジが恐る恐る八幡に尋ねると、

 「局長は何でも可能にしてしまう。だからこうして定時報告のためにここを使えるのだよ」

 と説明してくれた
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