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横浜事変-the mixing black&white-
暁ケンジは己のエゴのために裏世界への一歩を踏み出した
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安だった。
――いや、僕が悩んでいるのはそれだけじゃない。
――僕自身が怖いんだ。人を殺す事が、どうしようもなく……。
あまりにも単純で、あまりにも近い場所にあった、潜在的恐怖。復讐すること。それは相手を追い詰めて追い詰めて追い詰めて、最終的に自身の手で犯人の命を奪うこと。
自分は復讐をバカにされた事で大声を上げてしまったのではなく、復讐をするための『殺人』をするだけの勇気がない事を隠すために声を張り上げてしまったのではないだろうか?
――ああ、やっぱり僕狂ってるのかも。
――ここにきてまだ諦めてないんだから。
心中で苦笑いしつつ、ケンジは前を見据えた。八幡から目を逸らしたら負けだと自分に言い聞かせ、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「僕は僕の意思で、ここにいます。でも貴方達とは違って、まだ人の命を簡単に奪うだけの力も、手段も、勇気もない」
「なら、君はどうしたい?」
「……僕は、自分のエゴで引き金を引きます。貴方達の持つ情報量や知識を使って」
「そうか」
短く受け答え、八幡はフフッと笑った。やはり自分の甘い考えは一笑に付す程度のものだったのか。ケンジが自分の非力さに嘆こうとしたところで、
「やはり君は面白い。君みたいなキレた人材は久しぶりだよ」
八幡はやや興奮気味に、廃屋の天井に向けて宣言した。
「我々、殺し屋統括情報局は暁ケンジ君を歓迎しよう。燃える復讐心は君を必ず強くしてくれる」
その言葉を聞いた瞬間、彼は必然的に感じた。
――もう、元には戻れないね。
しかし彼は、自分が思っている以上に後悔や己の愚考に浸っていない事に気付いた。それはすでに自分が心の整理を終えた表れなのかもしれない。そう考えただけで背中や額から汗がスーッと消えていった。
「おお、怖い怖い。お前そんな顔も出来んのかよ」
突然、パイプ椅子に座った金髪男がそんな事を言い出した。一体何を言っているのかと聞くと、彼は実に面白そうに答えてくれた。
「決まってんじゃん。今のお前の顔だよ。狙った獲物は逃がさねえとでも言いたげな、恐ろしい顔だぜ?」
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