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横浜事変-the mixing black&white-
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葉を投げかけたのだ。
――こんなところで、止まっていられない。
ケンジは心中でそう呟いた。いつの間にか涙は止まっていた。悲しみは残っているけれど、いつまでも寄り添っていられない。彼はキッと顔を上げて立ち上がった。ここにいてはいけない。また迷妄にとり憑かれるだけだ。
公園を出て、道を挟んだ先にあるビルとビルの合間の裏路地に入る。ここは昨日彼女と近道に使った道だ。街灯も何も無いので不気味さがあちこちから湧き出ているが、月の光が薄気味悪さを緩和してくれている。
彼は視界を前に固定し、そのまま歩き続けた。しかし突然、ガサリという音がして身体を強張らせながらそちらを向く。猫が生ごみを漁っているだけだった。その様子に心底安堵したそのときだった。
「あっぐ、おあぁ!」
「!?」
今度は半歩後ろに飛び退いたケンジ。今のは幻聴ではない。確かならビルを挟んで右の方から聞こえてきた。少し先に十字路がある。そこを右に曲がったら真実が目の当たりになるかもしれない。ケンジは息を殺してその場で硬直した。
――これは……まずい。
身体は今すぐ駆け出して逃げたい気持ちなのだが、思考がそれに追い着いていない。金縛りに遭ったように固まってしまった自分を無理矢理動かそうとしていたところで、同じ方向から形容しがたい音が転がってきた。
強いていうなら、刃物で柔らかい何かを斬ったような生々しい音。それを元に脳内で絵面を思い浮かべたケンジは背筋を震わせた。
――ヤバい、ヤバいヤバいヤバい。まさか本当に……。
昨日幼馴染を殺した人物も、と無意識に考えてしまう。だとしたら自分も相当危ないのではないか。ケンジは身体を動かそうとする一方で、音が生じた方角から目を離せずにいた。
しかしそこで予想外の進展が発生してしまった。今注視していた位置の方から誰かが歩いて来たのだ。つまりこのままだと十字路のところから自分の姿が見えてしまうわけで――
――待って!僕は自分から死に来たわけじゃないんだ!
口内はすでに水分を失い、言葉を十分に紡ぎ出せない。身体は強張ってしまって動かない。トン、トンという一定のリズムは鳴り止まず、十字路に差し掛かっていく。自分の首を誰かに絞められているような重苦を覚え、生きた心地が全くしない。
それはやがてタイムリミットを迎え、ケンジの視界に一つの特異点が追加された。
「……」
ビルの死角から現れたのは長身の人物だった。しかしここからでは相手の風貌が上手く覗けない。月の淡い光が反射してしまい、逆に相手のシルエットを隠してしまっているのだ。
一方、相手もケンジの存在に気付いているようで、見ているかは分からないが身体はこちらを向いたまま硬直している。
互いに
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