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横浜事変-the mixing black&white-
プロローグ
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の耳にも勿論入っている。だが、あくまで会話の話題として捉え、現実的には考えていなかった。

 だがネットや週刊誌ではその存在が露見されており、中にはそれらしき人物が監視カメラに映ったというリアルすぎるネタも上げられている。しかし、動揺した住民の暴動が起きかねないと忌避した横浜市長直々の撤回指示により、出回った情報にはロックが掛けられた。

そんな中、最初の噂から少し経った街に新たなネタが浮き上がって来た。

 それは『殺し屋の電話番号』だった。情報のソースは不明。いつの間にかネットに出回っていたらしい。

 この番号をプッシュすると本当に殺し屋と接触出来て、自分が殺してほしいと思う人を本当に殺してくれる。それがこのネタの説明のようなものだ。

 もちろん遊び半分で電話した者が現れた。とはいえ、実際に殺し屋と思われる人物が接触してくる事はなく、体験者が面白がってそれをネットに拡散したため、掲示板などは様々な書き込みで埋め尽くされた。

 殺し屋をコケにする言葉、元から信じていない人による非難の言葉、実際にいたら殺してほしいと本音を零している言葉……共通しているのは、皆がネタとして扱っている事だ。誰も実在するという選択肢を手に取ろうとはしない。逃避しているのか、果ては本当にいるわけがないと断言しているのか。どれにしろ、それらの反応は至って普通であると言える。

 そうして僅かな時間が経った現在――横浜の街は泰然とした調子で回り続けていた。今や殺し屋の話題は徐々に薄れつつある。その一番の理由としては、実際に電話を掛けたのに誰も来なかったという事実がネットを中心に出回ったからだろう。虚実と受け取った彼らは、自然と会話から殺し屋というワードを扱わなくなった。

 結局、住民を三者三様に蠢かせただけの殺し屋は街を揺さ振る事すら敵わず、ネットの海の中に沈み込んだ。

***

 しかしケンジの幼馴染は違った。彼女は自分の住む街に現れた『未知』に興奮し、すぐに情報収集に取り掛かった。その時の顔は喜色満面に溢れ、人生に新たな希望を生み出したように晴れ晴れとしていた。

いつもは発見するだけで8割方満足して答えを出す事には恣意的なのに、今回はやけに気合いが入っていた。それが逆にケンジの不安をかき立てていた。

 殺し屋の話題が希薄になっているのに、彼女だけはこのネタに食い付いていた。クラスの女子からいろいろと注意されていたが「大丈夫!死にゃしないから!」と彼女は平べったい胸を張りながら答えていた。しかし迫力があったのは確かで、女子達は気圧されてそれ以上言わなくなってしまった。

 ケンジも今回ばかりは関わりたくないと思いながら、やはり終始彼女の隣にいた。そんな彼を見て、クラスの男子からは「お前、ちょっとは言いたい事言わなきゃダ
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