第三話
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れ、倒れ込んだところに振り下ろされる大棍棒の一撃を庇いに入った父もろとも吹き飛ばした。
吹き飛ばされながらも父は最期の気力を振り絞り、トロールを絶命にまで追い込んだが、既に致命傷で、母ともども助からなかったらしい。
前世の記憶の在る俺には少し複雑な気持ちだが、それでも優しい両親だった。
俺はその日、この世界に生れ落ちて初めて声が枯れるまで泣きはらしたのだった。
次の日、両親の訃報を聞き、兄が魔法学院から帰郷した。
10歳年上の兄は学院の寮に入っていて、この難をのがれたのだった。
兄が帰郷し、両親の葬儀を執り行う。
直轄の街も被害甚大で、領主の訃報にも駆けつける領民は皆無に等しいが、それでも盛大に執り行った。
それから一週間。
兄はオラン伯爵領の領主引継ぎを済ませた後、執事のセバさんに領地経営を任せ、自分は王宮騎士に志願すべくトリスタニアに行ってしまった。
どうやらこのトロール襲撃事件を裏で操っていた物が居るというのが兄の見解だ。
父は清廉潔白を絵で描いたような人で、汚職を嫌い、何時も不正を正す事を躊躇わず、官僚からの覚えは悪かったのだろう。
今回も宮廷での汚職を告発すべく王都に向かう手前だったのだ。
その直前に現れたトロールを不審に思うのは当たり前だ。
更に、両親が死んだ後、他の住人を攻撃するでもなく直ぐに引き上げて言ったトロールにも疑念がのこる。
兄は事の真相を突き止めるために学院を辞め騎士になり、出世する道を進むと決めたようだ。
屋敷の内部は余り破壊されていない為生活には不自由しないが、両親を失った事による喪失感と、ただ一人の肉親となった兄もこの屋敷を出て行ってしまったことによる寂寥感に俺はさいなまれるのだった。
そんな喪失と寂寥を感じていた俺は、ドクターの所に預けたままの少女の事をようやく思い出した。
俺はこの喪失感を紛らわさせるためにドクターの古屋を訪れるのだった。
ドクターの古屋の扉を開き俺は中に入る。
「ドクター?」
俺はドクターの定位置であろう研究机の方に視線を向ける。
するとそこに机に向い何かを書きなぐっているドクター。
しかしどこか精彩を欠いている。
「あ、ああ。お主か」
机から振り返りこちらを向くドクター。
少しやつれたようだ。
「女の子は?」
「ああ、あっちの部屋に居るよ。体は無事完治した。右目の方も恐らくは見えているだろうとは思うのだが」
うん?何やら歯切れが悪いな。
と言うか未だ此処に居たのか。
まあ、此処から街まで、徒歩だとかなりの距離がある上にドクターはこの古屋を出る事は先ず無い。
ドクターのあの性格から言って送り届ける
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