≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
ソードアートの登竜門 その伍
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重たくなってくる。これは空気の重量が上がっているのではなく、周りのオブジェクトに簡素ながらも彫刻や傷跡が施され、視界から入る細やかな情報が増えたからだろう。だからといってラグくなっている訳ではない。気持ちの問題だ。SAOは相当なことがあってもラグが起きることは有り得ない、と考えてもいいだろう。ソードアート・オンラインは皮肉にも、デスゲームという事件のおかげで過去最高のスペックを誇るゲームとなっているはずだ。もしかしたらだが、これも茅場明彦が望んでいたことなのだろうか。
それを言うなら、少なくとも茅場明彦は第一層のボス戦を望んでいるはずだ。
俺達は小走りでディアベルのパーティーと合流、俺から彼らに話しかけた。
「偵察かい? ディアベルさん」
ディアベルは後方からの声に振り返り、一度こくりと頷いた。その後、ディアベルは「顔を見るだけだよ」と言いインディゴが「それなら混ぜてちょうだい」と返す。ディアベル達六人も特に異議はないらしい。無言の肯定も孕んだ「突撃」の言葉と供に、我らの八人の零細レイドのリーダーが先陣を切り突入した。
ボスの部屋が最奥の、およそ百メートル先のほうから美しい七色に輝き、薄暗い洞窟が華やかなコボルト王の玉座と変貌する。
玉座の間に佇んでいたボスは身の丈が二メートルを優に超える巨大なコボルト、名前を≪イルファング・ザ・コボルドロード≫、――イルファングとはどういう意味だろう、ただの名前だろうか、だとしたら中々にセンスがありカッコいい名前だ――クールな名前のインファルグの武器は右手の斧と左手の盾。取り巻きには≪ルインコボルド・センチネル≫という金属鎧に包まれた斧槍持ちが三匹。
インファルグはこちらを睨むと大きな咆哮を一つあげ、それを合図にセンチネル達が駆けてくる。
そこまで分かるとディアベルは接敵はせずにそのまま撤退した。先ほど散々ビビっていた俺が言うのもなんだが拍子抜け、とまではいかなくても正直少しがっかりだった。
ディアベル達は直ぐに撤退したが、俺は少し長く玉座の間に居た。といっても数秒だ。接敵するほどのロングステイはしていない。最後尾の俺はインディゴに急かされ名残惜しくもその場から立ち去った。俺がイルファングから出口へと顔を向けたら、インディゴが苦笑交じりで呆れ気味に話しかけた。
「貴方ねぇ……。何笑っているのよ……」
俺は口に手を当てて、つい溢れそうな笑い声と高揚を無理矢理に押さえつけた。
最早、俺はどうしようもないほどフロアボス、≪イルファング・ザ・コボルドロード≫の虜になってしまったのだった。
◆
日付は変わらずに夕方、昨日と同じ時間頃。第二回フロアボス攻略会議の会場、噴水
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