暁 〜小説投稿サイト〜
バカとテストと白銀(ぎん)の姫君
第一章 小問集合(order a la carte)
第5.5話 二人の翳
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けられなくなるほどに僕は興奮していて、冷めていて、怒っていて

ただ淡々と判断しているだけなのに、何でこんな気持ちに成っているのだろう。認めたって何にも成らないのに。
その時自分の右手がじんと痛むのに気がついた。握りしめた拳から力を入れ過ぎたせいで爪が手のひらに食い込んでしまったようだ。
無意識に手に掛けていた力を抜き指を開けるとほんの少しだけ血が出ていた。
(血・・・・)
脳裏を横切る無数の人の声、自分の行動と他者からの影響。

血  屋上  無力な自分  守らなければならないもの

天才的な先達 周囲から向けられる好奇の眼差し この世に居ない肉親


「っておい!大丈夫か?」
膝から崩れてしまった僕の所に駆け寄ってくる坂本。
「済みません、実は貧血気味でして。」
そんな言い訳が通用しないほどに自分の顔が真っ青であろうことが自分でも理解できる。


「俺がAクラスに勝負を挑む理由はな、ガキの頃からのある奴とのねじ曲がった関係を清算するためだ。」
しばらくの静寂を打ち破る声。
声のする方に視線を巡らせると、階段のドアにもたれながらグランドの向こうを、いやそれより遠い何かを眺めながらそう零す坂本に行き着いた。
「坂本君……」
「俺に協力しろ、お前の為にな。同じような道の行き着く先の一つを見せてやる。ってもお前のそれよりはだいぶ軽くて、下らん拘りなんだろうがな」
なんて傲慢なのだろう。
しかし悪い気はしなかった。
「………はい。承知、致します。」
僕はその時、どういう顔をしていただろう。
ともかくこうして僕はFクラスの参謀に任じられた。
ちなみに、僕は翌年に成ってようやくこのときの“僕のため”の真意は身を持って理解したのだった。



屋上からの帰り。
「坂本君も私のように捻くれているとは感じていましたが、まさか……」
「あぁあ、聞こえねー。」
頭の後ろで手を組みながら半歩前を歩く坂本、それはまるで自分の未来の姿の一つに思えた。
家柄的に坂本のように粗野に振る舞うようになることはできないだろうけれど、何か条件が一つでもずれていたらもしかしたら。
そんなことを思ったら自分の事もいつかは、と思わなくもない。
級友となった彼らと、もし笑いながら学園生活を過ごしていこうと思うのならば。
それなら僕の取る選択肢なんか一つに決まってる。
「そうそう、私のことを参謀と呼ぶのでしたら、坂本君のことは代表殿とでも呼ぶことにしますね。」
「まぁ期待してるぞ、参謀。」
「畏まりました、代表。」
おどけて敬礼をしてみると代表に笑われてしまった。
道化にすぎたなと思いながら僕もまた笑い、それぞれの家への道を歩いていた。



自分の部屋に荷物を投げ出し、ベッドに倒れ込む。
さすがに汗をかい
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