暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
船上から戦場へ
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、しかし温かみの欠片もないオフホワイトの棚は空き巣も眉をしかめるほど雑多に荒らされていた。一応音を響かせるのに気を使ったのか、高そうな薬の入ったビンなどは丁寧に床に置かれて入るが、それにしたって五十歩百歩な気がする。
「レ〜ン〜」
「ひ、非常事態だし。ここのお医者さんも許してくれるよー」
適当にうそぶきつつ、レンはメスを三本手渡してくれた。見つかったメスは全部で五本。
「だけど、これダメージ判定でるのかな?」
「そこら辺はテキトーテキトー。ま、出なかった時は出なかった時で考えよ」
「そんな悠長な……」
こんな薄っぺらなメス一本で、あんなレア装備の塊みたいな奴らにいかほどのダメージが通るのかは、正直かなり微妙な線引きだ。だが、このクエストが
生存
(
サバイバル
)
を基本行動に想定してデザインされているならば、その中にあるちょっとしたものにダメージ判定がないとかなり、いやクリア不可能と暗に言われているに等しいような気がする。
いくらあのシゲさんだって、クリア不可能に設定されているクエストに二人を放り込むほど非情ではない……はずだ。
「……う〜ん、大丈夫かなぁ」
「へーきへーき」
ぴくり、と艶やかな黒髪に隠された少年の耳が動く。その口元が、横に裂けていく。
「…………さて、と」
それは、とても小さな音。いや、音ともいえないかもしれない空気の震え。
だがそれを聞き取った少年の少女の顔つきが、みるみるうちに変わっていく。
日常から、船上へ。もとい、戦場へと。
息を、動きを、気配を殺してはいるが、逆にその過程で発される齟齬を伝えてきてしまっている。
「ちょっと……喋りすぎたかな?」
「どっちみち戦闘は避けられなかったんだし、いいんじゃない?」
この世界で一番頼りない武器が、あたかも忍者の使う暗器のような、そんな圧力を放ち始める。
「さぁて。開戦といきますか」
少女に見える少年が思わずといった風に呟いた直後、号砲を思い出させる銃撃音とともに施錠されたドアが吹き飛んだ。
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